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交通事故率が女性のほうが高いのはなぜか、空間能力からの推考

 男性脳と女性脳の違いは実に興味深いものがあります。
 今回は、交通事故率が女性のほうが男性より5割ほど高いという調査結果が出ているのですが、それはなぜか。この問題について取り上げることにしましょう。
 初版は2000年と少々古い本ですが、その表題に「話を聞かない男、地図が読めない女」(ピーズ夫妻著)とあるように、女性脳には空間能力が落ちるようですから「地図が読めない」という劣性が生じるようなのですが、それはそれとして、空間能力があるかないかによって運転能力にも違いが出てくるようです。そのあたりのことを、同書文庫版から引用して紹介することとしましょう。

(P.136)
空間能力とは?
 対象物の形や大きさ、空間に占める割合、動き、配置などを思い浮かべること、それが空間能力だ。さらには、対象物を回転させたり、障害を回避しながら進んだり、立体的にものを眺めるといったことも加わる。標的の動きを見きわめて、攻撃のしかたを決めるのが本来の目的だ。…女の脳では、脳の中に、空間能力を管理する特定の領域がないために、女に空間を扱う作業をやらせるとうまくできない。…男の脳は空間能力の中心がはっきりしているので、空間能力を活用する作業が得意だし、仕事やスポーツもその手のものを好む。

(P.155)
 2000年に、イギリスのドライバー2300万人の保険記録を調べてみたところ、過去4年間に保険金の支払い請求を行なったのは女性ドライバー全体の25.5%だったのに対し、男性は18.6%だった。また…過去12か月間に事故を起こしたドライバーは男性で6.5%、女性で9%だった。この数字から、女性は車の運転がへただと結論づけるのは簡単だが、もっと詳しく調べてみると、いささか異なる事情が見えてくる。女は慎重なために、ロータリーで動き出すまでにほんの数秒よけいに時間がかかるし、待つ必要がないときでも待とうとする。この慎重さが、他のドライバーからは優柔不断と受けとめられるのだ。しかし、女は事故の回数こそ多いものの、支払われた保険金額はむしろ少ない。車を軽くぶつけたとか、こすったという軽い事故が多いからである。
(参考:同様な最近のイギリスでの調査結果→ページ末に掲載)

(P.153)
 …イギリスの自動車学校が実施した調査によると、イギリス人の男性の82%は、舗道の縁石にぴったりつけて車を停めることができるし、71%は一発で縦列駐車ができるという。しかし女性となると、同じようにぴったりつけて車を停車できる人は22%、縦列駐車が一発でできる人は23%しかいない。…
 また、自動車学校で勉強しているときは、女のほうが並列駐車がうまいのに、いざ公道に出るとへたになるという統計もある。環境や状況が一定していて、決まった作業を繰りかえすのであれば、女性は飲みこみも速いし、うまくできる。だが実際に道路を走るときは、たえず新しい情報を処理しなければならない。だから空間能力に優れた男のほうが、たくみに処理できるのだ。
 女は狭いスペースに車を入れるぐらいなら、少しぐらい離れていても広い駐車場を見つけて、歩いて目的地に行くほうを選ぶ。

(P.151)
 夫が妻に車の運転を教えるーーこの夫婦は離婚への道をまっしぐらに進んでいるのと同じだ。こういうとき、男の指示の出し方は万国共通だ。「左折してーースピードを落とすーーギアを切りかえてーー歩行者に気をつけろよーー泣くんじゃない!」。そもそも男にとって運転の目的は、状況に対して空間能力を発揮することにある。しかし女が運転するのは、2地点間を安全に移動するためだ。だから助手席に座った男は、ラジオのスイッチを入れ、目を閉じて、口をつぐんであれこれ言わないのがいちばんだ。概して運転のしかたは女のほうが慎重なので、目的地には無事に着けるだろうーーただ、時間が少しばかりかかるだけだ。

(P.40)
 車をバックさせながら、フェンダーから車庫までの距離を測る空間能力は、右脳の前のほうがつかさどっている。女性はこの能力があまり高くない。

(P.48)
 一般に暗いところで目がきくのは女のほうで、とくに赤っぽい色がよく見える。しかし男は右脳の空間能力が優れており、前後を走る車の動き、自分との距離をはっきりとらえることができる。これに対して、対向車がどの車線を走っているのかわからなくなる、一種の夜盲状態を経験した女性は多い。…女は暗いところでも細部までよく見えているが、その範囲は左右に広いだけで、前後の距離は短いからだ。

(P.42)
女はうしろにも目がついている
 実際に目がついているわけではないが、たしかにそれに近い。女性は…周辺視野が男より広い。左右では頭の端から少なくとも45度外まで…見られるようになっている。視野の範囲がほぼ180度におよぶ女性も珍しくない。
 男の場合、…長距離を見とおす「トンネル視」ができるような脳の作りになっている。つまり、目の延長線上にあるものなら、遠くでもはっきり正確に見ることができる。…
 狩猟者である男は、遠くにいる獲物を追跡するため、注意がそれないようもっぱら前方が見えるように進化した。女の視野が広くなったのは、忍びよる捕食動物をいち早く見つけるためだ。…
 イギリスでは1997年に、4000人近くの子どもが交通事故で死亡または負傷した。内訳は男の子が2460人、女の子が1492人である。…男の子は周辺視野が狭いから、危険に気づかないまま道路を渡ろうとして事故にあってしまうのだ。
(引用ここまで)

 いかがでしたでしょうか。男性脳と女性脳の違いは、右脳と左脳の働き方の違いと両方の脳の連結の良し悪しによって生ずるものです。
 以前に紹介した男性脳と女性脳の違いの一つ、視野の広狭について1枚の絵を再掲します。

絵画鑑賞

 この絵が、少女に見えたら視野は狭くて男性脳、老婆に見えたら視野は広くて女性脳ということになります。

 ところで、引用文の最後の男の子と女の子の交通事故死傷者数の差異は、これだけが原因して大きな開きがあると断定するのはいかがなものでしょうか。男の子はわんぱくでおっちょこちょいな面があり、こうした性分もかなり原因していると思われます。

 空間能力と関連して空間認識の男女差について、黒川伊保子著「恋愛脳 男心と女心は、なぜこうもすれ違うのか」から引き続き引用します。
(P.117)
 モノをべったりと二次元的に見る女性脳は、目の前の生身の人間も、まるで写真を見るように認識する。目が大きいとか、鼻が高いとか、肌や髪が美しいとか、化粧の仕上がりとか、そういう「部分」をしっかり観察しているのである。代わりに全体のバランスに弱いし、姿勢の美しさも二次的な要素になりやすい。したがって、女の場合、写真にアップで撮って美しい人と、美人がほぼ同義なのである。
 一方、男は、モノを舐めるように二次元的に見る見るのが不得意だ。物体を点で観測し、脳の中で空間構成する癖のある脳なのである。したがって、艶のある髪と、ふっくらした唇と、すっきりした歩き方の3点観測くらいで、この女をたいへんな美人だと思い込む。
(引用ここまで)

 ところで、生まれつきこうも男と女の脳は違うのかと、驚かされるのですが、これを客観的にみてみて、本当に生得的な、つまり生物学的要因に基づく性差なのか、生後、学習的、適応的につくられる、つまり社会的、文化的要因に基づく性差なのか、ということを検討し、評価していこうとして、著されたのが、田中冨久子著「女の脳・男の脳」です。
 田中女史は、まえがきで次のように言っておられます。
 …とくに新しい脳が担当する知的機能は、生後の養育や教育によって、つまり社会的に性差がつくられる部分が大きいということになりそうである。一方、古い脳が担当する、生命を維持したり、種を保存したり、また順位社会でよりアグレッシブに生きるための機能には、生まれるときにはすでに決まった男女の違いがあるだろう。
(引用ここまで)

 では、空間能力に関してはどうかというと、女史の書から以下抜粋しましょう。
(P.141)
 さまざまな検査をもとにした研究について見ていくと、おおかたは、青年期までは視覚・空間能力の性差はないが、青年期、成人期に達すると男女差が認められるとする結果を報告している。…
 このように、視覚・空間知覚能力は、たとえたいしたものではないにしても、性差があるようだ。男性のほうが優れているかもしれない。その原因は、というと、さまざまな可能性が挙げられているとはいえ、生物学的なものよりも、出生後の社会的因子に関するもののほうが多いそうだ。…
 女子の能力が往々にして充分に引き出されていない、ということを支持する仮説は数多く提出されている。…ベリーによる文化的要因説は、成育している社会の文化や学校教育の影響を重視する。たとえば、広大な、変化のとぼしい土地に住むイヌイット(エスキモー)は、色とりどりの植生で覆われた土地に住むテムネ人よりも空間能力に優れている。また、かなり自由に育てられるイヌイットの少女は、少年とのあいだに性差を示さない。しかし、厳しいしつけ社会で男子よりさらに厳しく育てられるテムネの少女は、少年よりも空間能力においてはっきりと劣っているという。「女性の社会的役割が最も制約されている社会では視覚・空間能力の性差が最大で、逆に女性がより自由な社会では性差は消える傾向にある」ともベリーは述べている。
(引用ここまで)

 最後に、田中女史が行われた面白い実験を紹介しよう。引用すると長文となるから、要約して記すこととします。
 オスメスのラットを柔らかい餌と固い餌で飼育した場合に視覚・空間能力に差が出るかどうか、実験前は、柔らかい餌で育てられたラットは脳の発達が遅れ、その違いが出るだろうと予測した。ところが、オスには餌による差が生じなかった(学習成立はともに約10日)が、メスには差が生じた。意に反して学習成立に固い餌は約15日、柔らかい餌は約10日となったのである。
 実験後、ラットを解剖して副腎の重量を測ると、固い餌で育てられたメスのラットは優位に副腎が大きかった。ストレスが持続すると、副腎の重量が大きくなることはよく知られた事実である。サポルスキーたちは近年、ストレス刺激によって分泌される副腎皮質ホルモンは海馬体(記憶中枢)のニューロンを選択的に攻撃、障害し、結果として海馬体のもつ空間認識機能が障害されることを証明しているのである。
 演繹すれば、男性優位社会では、すべての環境が男性に有利に出来ているかもしれないが、女性にとっては逆境ということができよう。少なくとも、日本人の副腎重量の平均値からは、私たちが実験したメスのラットのような肥大化は見られない。しかし、ヒトの教育環境は、実験動物としてのラットの環境よりはるかに多様である。それらが、それぞれちがったメカニズムで、ある神経回路形成にマイナスに働く可能性は否定できない。
(要約ここまで)

 学説というものは、このように大きく異なるのが普通です。どれも正しくもあり、それはほんの狭い一面からのことであって、ヒトの脳ともなると、環境や教育で発達もし、萎縮もします。また、こと交通事故を考えたとき、視覚・空間能力以外の脳的要因も絡んでくるのは必然でしょうから、なおさらです。
 とはいうものの、自動車の運転、交通事故に、男女で相対的にかなりの差があるのは事実で、男と女の違いというものが、ますます面白くなってきます。

(参考)イギリスにおける男女別の事故の傾向
 2013年(平成25年)にイギリスのダイアモンド・カー・インシュアランスが、過去5年間の40万件以上の事故を調査した男女別の事故の傾向を発表しています。
 それによると、女性ドライバーは、駐車場内や車庫入れの時にぶつけてしまったり、交通量が少ない狭い道での事故など、比較的軽い事故が多いのに対し、男性ドライバーは、人を轢いてしまったり、正面衝突、多重事故など、大きな事故の割合が多かったそうです。
 ダイアモンド・カー・インシュアランスのDave Halliday氏によると、「女性が低速衝突で衝突する可能性が高いのに対し、男性は高速でより破壊的な事故を起こす可能性が高いことは明らか」で、「男性ドライバーによる事故の保険金請求額は、女性ドライバーの事故よりも平均して高額になる」とのことです。
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