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Ⅰ 類人猿の性生活と社会生態

ヒト社会の変遷を霊長類社会から学ぶ

Ⅰ 類人猿の性生活と社会生態

 人類は水生進化したと考えられ、これについては、人類水生進化説 の中でヒトの形質の特殊性を様々な観点から見てきましたが、総じて言えますのは、ヒトは完全な陸生生活をするようになってから日がまだ浅く、陸生環境への適応が十分にはできていないがために、あらゆる面で身体障害者の状態にあるということです。
 分けても性に関しては、ヒトのメスは不感症になってしまったと言っても過言ではありません。一方のオスは、チンパンジーやボノボと同様に皆、性欲の塊のような存在で在り続けたとしか思えません。こうしたことから、ヒトの性生活というものは、原初の時代から随分と歪んだものになっていたと言わざるを得ないのです。
 それに伴って、ヒトの社会生態もチンパンジーやボノボとは大きく違ったものになってしまったと思われます。それを推察するに当っては、ヒトと近縁の種である類人猿の性生活と社会生態がどのようになっているかが、やはり基になりますので、その概要を紹介することから始めましょう。

1 系統発生に従わない性生活と社会生態
 動物の形質進化の歴史は系統発生で語られることを水生進化説の中で述べました。霊長類の体型も食性もほとんど例外なく、きれいに一定の方向に向かって秩序だった進化をしています。
 ところが、霊長類のオス・メスの体格の差(性的二形性)と性器の形状については系統発生のルールが大幅に崩れてしまっています。
 霊長類のオスの体はメスより2~3割大きいのが一般的ですが、倍の大きさのものがいたり、同型であったり、まれにはメスより小さいものがいたりします。これが、系統樹の中にほとんど無秩序に配置され、秩序だった進化は認められません。
 オスのペニスも同様で、その大きさや形そして色はどうかというと、実にバラエティーに富んでいて、芸術作品とも言える見事な造形美を持ったペニスの持ち主や燦然と輝く色鮮やかなペニスの持ち主も多いのです。
 睾丸の大きさとなると、体やペニスの大きさとは全く相関がなく、色鮮やかな巨大な睾丸をぶら下げている猿がいたりして、これも系統樹の秩序から大きく外れてしまっています。睾丸についてはっきりしていることは、その大きさは性交頻度に比例するということだけです。
 なお、メスの性器については性皮が目立ったものとなりますが、これを持つ種と持たない種も、また、系統発生とは無関係に現れ、人類水生進化説の中で述べましたように生活環境の影響を受けているとしか考えられません。
 ちなみに、テナガザルを含めた類人猿についてこれらを表にしてみましょう。参考までに体重も示しました。

  種       ペニス    睾丸    オスの体重   オスのメスに対する倍率
テナガザル4種    ?cm     1g    6~15Kg        1.0倍
オランウータン    4     40     100        2.2
ゴリラ        3     30     200        1.7
チンパンジー*    8    120      45        1.3
ボノボ*      13    120      40        1.2
ヒト        13     40      60        1.25 
(備考)*印:目立った性皮をメスが持つ種

 なお、数値は平均値で個体差は当然にしてかなりありますし、また、研究者によってデータにばらつきがあります。そこで、種間の比較を重視するために大ざっぱな丸めた数値で表示しました。
 この表に関して概説しておきましょう。
<ペニス>
 ペニスの長さは3タイプに別れます。極小ペニス群のテナガザル、オランウータンそしてゴリラは、メスに目立った性皮がありませんから、これで十分に事が足りています。中ぐらいのペニスのチンパンジーは、メスの発情時に性皮が数センチメートル膨らみますので、その分ペニスが長くなっています。ボノボとヒトの長大なペニスは、人類水生進化説の中で推察しましたように、膣口が腹側に少々移動したことが切っ掛けになったと思われます。
<睾丸>
 睾丸の重量も3タイプに分かれます。テナガザルは性交頻度が極めて小さいですから睾丸は極小で済んでいます。オランウータン、ゴリラそしてヒトの睾丸の重量はほぼ同じですから、性交頻度は類似していると考えて良いでしょう。チンパンジーとボノボは毎日にように性交を繰り返し、それも1日数回以上可能ですから、極大の睾丸を保有しています。
<性的二形性>
 性的二形性も3タイプに別れます。テナガザルは1雄1雌のペアを組み、霊長類におけるこのタイプに共通してオス・メス同じ大きさです。
 オランウータンとゴリラはオスの大きさがメスの約2倍もあり、性的二形性が顕著で1雄複雌に特徴的なものです。もっとも、現在のオランウータンは複雄複雌の形態をとっていると思われます。
 それ以外の3種はオスがメスより少し大きい標準タイプです。チンパンジーは複雄複雌の群を形成し、ボノボも同様ですが、ボノボの性的二形性はチンパンジーより多少縮まっているようです。ヒトの場合はというと、両者の中間という学者とチンパンジーと同じという学者があって不明確ですが、性的二形性は身長・体重・骨格から総合的に判断し、主観的に捉える面がありますから、そうした違いが生ずると思われます。
 性的二形性がなぜ表れるかと言いますと、これは、メスを巡ってのオス同士の威勢の張り合いに起因していると考えられています。
 1雄1雌であれば基本的にペアが組めますのでメス獲得争いが生じにくく、雌雄同型になってしまいます。
 それに対して、大人オスが1頭しかいない1雄複雌となると、あぶれるオスがたくさん出てきますから、オス同士の張り合いは非常に大きなものとなり、必然的に性的二形性が顕著になってしまうのです。
 除け者にされるオスが少ない複雄複雌の場合は、そこまでのことはなく、メスと優先的に性交するための順位付け程度で妥協しますから、性的二形性は小さなものとなり、2~3割の差しか生じないようです。

 これより、各種類人猿の性生活と社会生態について、主としてそれぞれの種に特徴的な事項を取り上げて紹介させていただきますが、先に、類人猿の分岐を示し、それを概説しておきます。
<類人猿の分岐年代>
 テナガザルと大型類人猿の分岐        年代不詳
 オランウータンと他の大型類人猿の分岐  1400万年前
 ゴリラと他の大型類人猿の分岐       700万年前
 ヒトとチンパンジーの分岐         500万年前
 チンパンジーとボノボ分岐         200万年前
 (注)分岐年代は、種によって生じているDNAの差異から推計されたものを参考にしました。

 テナガザルは東南アジアに住み、オランウータンと共通の祖先を持つようですが、種が分岐した年代は不明です。一部の地域でオランウータンと共存しています。
 オランウータンはインドネシアのボルネオ・スマトラ両島の一部の密林に住んでいて、約1400万年前にアフリカ系大型類人猿と地理的に隔離され、現在の姿になったと考えられています。
 ゴリラとチンパンジーはアフリカ大陸の一部の熱帯雨林とその縁辺部に住んでいて、約700万年前にその共通の祖先が地理的隔離によって別々に進化したものと思われます。その後に地理的隔離が解消されて、ともに熱帯雨林に戻ることができ、ゴリラとチンパンジーが生息域を重複させるようになり、今日でも一部の地域で共存しています。
 ヒトは人類水生進化説の中で推察しましたように、約500万年前にチンパンジーとの共通の祖先が孤島に地理的隔離をされて水生生活に入り、その後大地溝帯に移住し引き続き水生進化したに違いないでしょう。
 ボノボは約200万年前にチンパンジーとの共通の祖先から、コンゴ川によって地理的に隔離され、別種に進化しました。コンゴ川の南側に広がるコンゴ盆地の湿潤な密林奥深くに住んでいます。

2 テナガザルの性生活と社会生態
 テナガザルは1雄1雌のペア社会を形成します。0.5~1平方キロメートル程度の縄張りを持ち、隣のペアとは没交渉で友好的ではありません。
 オス・メスともに縄張りを宣言するテリトリー・ソングを朝夕に鳴き交わし、自分たちの居場所を主張し合います。
 食性はもともとは熟した果実を好物としていたようですが、絶対的に不足していて、今日では樹木の若芽や花を主食にしています。これは、オランウータンと生息域を重ね合わせることにより、果物は彼らと競合してしまい、樹冠での生活を余儀なくされるようになったからでしょう。
 メスは約3年に1回、1子を産みます。なお、霊長類のほとんどの種が1子出産です。テナガザルの場合、乳児が乳離れすると、メスはしばらくして2~3日間発情し、その間に1日1回程度性交します。
 この発情期以外はオスは性交が全くできない生活を強いられるのですが、それに慣れっこになっていて、霊長類としては珍しく、性に関してはいたって淡白な性格の持ち主です。なお、これはペア社会の特徴です。
 夫婦の絆が強いかというとそうでもなさそうです。メスが発情したとき、隣のペアのオスに浮気心を起こしたことが観察されていて、終生ペアが固定するとは限らないようですが、通常は一旦ペアができると終生連れ添うようです。
 夫婦が協力し合うのは縄張りの確保だけで、乳飲み子の世話は全部メスの仕事です。オスのメスへの協力としては乳離れした子の遊び相手を消極的にするだけです。従って、オスは単なる同居人に過ぎないと言っても過言ではないでしょう。
 下の子が乳離れする頃には、上の子はそろそろ性成熟を迎えて縄張りから出ていくことになるのですが、テナガザルは生息過密の状態にあって、独力では縄張りが作れず、逃げ帰ってくることがあります。
 そうしたときには、両親が連れ添って、縄張りにできそうな所を探してやったり、適当な場所が見付かっても、縄張りが狭すぎる場合は、隣接のペアを押しやったりして、縄張りの確保に協力してやるのです。
 このように、テナガザルのペアは霊長類にしては珍しく、性成熟を迎えた子に対しても子供思いの一面を持っています。

3 オランウータンの性生活と社会生態
 オランウータンは、現地語で、「オラン」は人を、「ウータン」は森を意味しています。つまり、「森の人」です。また、「森の哲学者」とも呼ばれています。オランウータン研究の第一人者、鈴木晃氏(霊長類学者)は、彼らは「思慮深く、おだやかな物腰で、人を感じさせる何かを持っている。」と、おっしゃっておられます。
 なお、本節及び前節の内容は、主に鈴木氏の著「オランウータンの不思議社会」(岩波ジュニア文庫)を要約したものです。

 オランウータンは植食性で、熟した果物を主食とし、端境期には樹木の若葉や柔らかい樹皮などを食べ、花も食べます。もっとも、植食性と言えども、大型類人猿に共通する「アリ(蟻)食い」などの食文化を持っているのですが、これについては第2章で説明します。
 彼らの生息域は見通しの利かない密林で、かつ、樹上で生活していますから十分な観察が難しく、社会生態の詳細はいまだに不明です。
 オス・メスともに単独生活をしていますが、特定のオス・メス間で緩く結合しているようです。顕著な性的二形性を示していますので、もともとはゴリラと同様に父系1雄複雌群であったことでしょうが、生活環境の変化によって群が崩壊してしまったものと思われます。
 メスはあまり移動することなく単独で生活していますが、たいていは数百メートル離れた隣に別のメスがいて、そのメスの気配が何日もしなくなると心配して探し回るようで、メス同士の反発はなさそうです。
 彼女たちは、普段、母と子の二人っきりの孤独を楽しんでいるようですが、血縁関係にあるメス同士でどれだけか連携しているようで、隣のメスの所へ出かけて子供同士を遊ばせたりしますし、果物の実りが少なくなると連れ立って遠くの場所へ引っ越したりします。
 子は6~8歳になると、性成熟前ですが通常は親離れします。
 オスは生まれ育った所から大きく離れて単独で遊動するようになりますが、メスは母親の近くに留まることが多いようです。
 オス同士がグループを作って遊動することはまれで、あったとしてもそれは若オスです。大人オスは単独行動し、遊動範囲を非常に広く取りながら、他のオスたちと遊動域を大きく重ね合わせています。
 こうしたことから、今では緩い母系社会になっていると思われます。

 子は3~4歳で乳離れします。霊長類のメスは一般に子が乳離れしたら、メスは基本的に直ぐに発情し、次の子を身ごもるのですが、オランウータンの場合は、離乳後2~3年経たないことには発情しません。
 発情が大幅に遅れるのは、恒常的な栄養不足が定着してしまっているからと思われます。子が乳離れしても、次の子を身ごもるだけの栄養がメスの体に蓄えられていないと考えるしかないです。
 こうしたケースはニホンザルにも見られます。通常、メスは毎年秋頃に発情するのですが、大阪府の箕面谷のニホンザルの群の場合、餌付けされるようになるまでは食糧資源が乏しかったために恒常的な栄養不足になっていて、隔年でしか発情しませんでした。
 オランウータンの恒常的な栄養不足の原因は不明ですが、同じ熱帯雨林であってもアフリカと東南アジアでは植生が大きく違っていて、栄養価の高い果物が乏しいのかもしれません。
 オランウータンのメスの発情はおおむね1か月に1度、1週間から10日間程度続きます。そのメスの所へ入れ替わり立ち代り、複数の特定のオスがやってきます。そのオスたちの滞在日数は通常2~3日間程度ですが、まれに1か月になることもあります。
 オスは非常に広い範囲を遊動しながら、特定のメスの発情をちゃんと察知してやってくるのですから、誠にもって不思議なことです。
 また、発情メスは数頭の特定のオスと関係を持つようですから、同時に複数のオスがやって来てしまって、オス同士の諍いが起きてもよさそうなのですが、そうした事態は観察されていません。
 これは、オスは遠くまで届くロング・コールと呼ばれる共鳴音を時々発しますから、これによってオス同士の異常接近を回避しているのではないかと思われます。
 彼らは樹上で性交しますから後背位が採りづらく、座位または対面位となります。これではペニスによるGスポットへの刺激が薄れてしまいますから、オルガスムに達するのに随分と時間がかかり、一般的に30分前後を要します。彼らの性交は極めてゆっくりとしたものですから、性急に事を進めようという気はなさそうで、濃厚な体の接触を通して久し振りの再開を二人で楽しんでいる、と考えた方が良さそうです。

 さて、オランウータンには大変特徴的な行動がまれに見られます。
 唯一ヒトのオスだけしか行わないと考えられていましたレイプを、まれにではありますが若オスが行います。
 メスはそうした若オスの接近を察知すると、逃げようとしたり、接触を拒否しようとするのですが、追い詰められて一旦ペニスが膣に挿入されてしまうと、「なあんだ、したかったのか。好きになさい。」というような素振りをみせて、レイプの間に採食することさえあります。
 その性交時間は通常の場合よりずっと短く、10分以内です。
 レイプが起きる原因は、メスたちが広く散開して暮らしていますので、若オスは大人オスに察知されることなく容易に大人メスに接近できてしまうからと思われます。そして、若オスといえどもその体は大人メスに比べれば圧倒的に大きいですから、力ずくで性交できるからでしょう。
 もう一つの要因として、メスが発情を再開するのは子が親離れする頃になりますから、若オスは生まれ育って以来、母親が大人オスと性交している場面を見る機会に恵まれず、大人のオス・メス間の付き合い方が十分には学習できていないからと思われます。
 その学習は親離れ後に単独で遊動する中で、大人のオス・メスの接触の在り方を遠くから眺めて行うしかありませんが、これを積み重ねることによって大人メスとのまともな付き合い方を覚えていくのでしょう。
 そして、大人に成長すればメスの了承を得てから性交するようになって、大人のオス・メス間の緊密な関係が構築できるようになるのです。

4 ゴリラの性生活と社会生態
 ゴリラ研究の第一人者、山極寿一氏(霊長類学者)は、特にオスゴリラについて「ゴリラは寡黙で気難しく、陰鬱で暗さを感じさせる。人間には到達できない重厚な気品と迫力を秘めている。」と、おっしゃっておられます。また、欧米の複数の研究者は「ゴリラは内気で、穏やかで、攻撃性がなく、友好的な性格の持ち主」と評しています。
 これがゴリラの本性なのでしょうが、近年の調査においては、群を統率している核オス同士が衝突して殺し合ったり、また、核オスによる子殺しが頻発するなど、獰猛性を表出させ、注目を浴びています。
 それはマウンテンゴリラの調査で明らかになりました。1960年のコンゴ動乱前のゴリラ社会は、群同士が出会っても核オスが威勢を誇示し合うだけで衝突することはなかったですし、場合によっては群同士が混じり合って子供たちが遊び合ったりもするという穏やかで平和な社会生活をしていました。ところが、動乱によって森林破壊とゴリラの殺戮が行われ、その後の調査においては核オスが暴力的になってしまったのです。
 このような状態は彼らの社会にあっては特殊な事象でして、一時的に生じた混乱状態と考えて良いでしょうから、極力それらを外して、山極氏の著「ゴリラ」(東京大学出版会)及び「ゴリラとヒトの間」(講談社)などから要約して、彼らの社会を紹介しましょう。

 ゴリラは1頭の核オスの回りに数頭のメスとその子供たちがこじんまりと密集して1雄複雌群を形成し、まとまって大きく遊動しています。
 彼らは縄張りを持ちませんが、遊動域は大体一定しています。幾つもの群が遊動域を大きく重ね合わせていて、群同士が接近したり、単独オスが群に忍び寄ることがよくあります。核オスがそれを察知すると、ドラミングと呼ばれる胸たたきなどの一連のディスプレーを大袈裟に披露し、威勢を誇示します。このディスプレーは相手をひるませると同時に、メスたちに威厳を示し、メスを引き留めておく効果があると思われます。
 なお、核オスは、こうした接近の際にメスがライバルのオスのもとへ走りはしないかと心配するようで、その気配を察知するとメスに噛み付いて引きずり戻すという嫉妬深さを持っています。
 でも、このような暴力行為はめったに起きず、浮気心を起こしたメスは、核オスの目を盗んでこっそり群れ渡りします。
 移籍しようとするメスが選んだ群が、複雄(老齢のオスと跡を継がせるために残した大人オス2頭)のこともありますが、その場合、メスが老齢オスに好意を抱いたとしても無視され、後継ぎのオスがプロポーズしてきます。メスがそのオスを好まなかったら、直ぐに別の群なり、単独オスのもとに渡ることになります。
 また、メスが一旦群に加入しても、出産するまでは何度か群れ渡りすることがあるようで、より気に入ったオスを選んでいるようです。
 子が生まれると一般的にメスは群れ渡りしなくなりますが、子が乳離れして発情を再開する段になると、その子を残して群れ渡りしてしまうメスもけっこういるようです。
 メスは約4年ごとに1子を出産します。乳児が乳離れすると、しばらくして2~3日間発情し、その間に1日1回程度性交します。そして、妊娠しても約1か月ごとに発情を繰り返し、出産直前まで性交することがあります。でも、出産後の約3年間にわたる授乳期間中は発情しませんから、性交することはありません。
 従って、核オスは1か月に1~2頭の発情メスを相手に、それぞれのメスとの間で2~3回性交することができます。
 メスは密集して暮らしているものの、互いに不干渉で接触することは少ないです。これは、メスは基本的に出自群を異にした余所者同士ですから、緊密な仲になることはなく、それぞれのメスは核オスにしか関心を持っていないからです。かといって、全くの没交渉ではありません。子供同士の遊びを通して間接的に関わり合いを持たざるを得ないからです。時には友好的に、時には敵対的に関わることになります。また、採食場所を取り合ったり譲り合ったりすることもあります。
 こうして、メス間に少しばかり順位付けが生じますが、緩い長幼の序列程度のもので明確なものではないようです。

 核オスは何頭もの乳児や子供の子守をこまめにします。母親が食事をするために乳児を核オスの側に置き去りにすることがありますが、核オスはその乳児を優しく抱いたりして安心させますし、母親が死ぬと核オスは自分のベッドで子供を寝かせてやったりもします。また、自分の大きな背中を滑り台の代わりにしてやって、乳離れした子供たちを遊ばせたりもします。もう少し大きくなってきた子供たちには追いかけっこの相手やレスリングの真似をしてやります。そして、核オスは若オスと対等にレスリングをするなど、オス同士でも楽しげに遊びます。大人になっても遊び合うのは、唯一大型類人猿のオスだけの特徴で、チンパンジーやボノボも同様です。
 ところで、核オスは、遊び好きで根っからの子煩悩がゆえに積極的に子守をしているというわけではなく、メスたちを群に引き留めておくために、やむを得ずそうしているようです。
 こうした核オスの子煩悩振りがあだになって、メスは乳離れした子のことを何も心配しなくて良いですから、発情の再開によって、より魅力的なオスのもとへ走ってしまうことがあるのでしょう。
 群で成長した若オスが性成熟すると、核オスによって追い出されます。その若オスは最初は未練がましく群に付いて回りますが、やがてあきらめて次第に離れていき、単独行動を取るようになります。
 若オスが何頭か集まったグループを作ることはまれで、ゴリラのオスは大人同士の共存を嫌うと考えて良いでしょう。
 そして、独り立ちしたオスは、数年ないし10年以上も単独行動をすることになるのです。単独行動といっても、性成熟していますからメスを獲得したい気持ちが高く、他の群にこっそり接近するのですが、メスはそうした若造には易々と乗ってくれるものではありません。
 ゴリラの体毛は黒色ないし濃い茶色で、これは亜種によって違うのですが、性成熟したばかりの若オスの背中はそうした色をしていますからブラックバックと呼ばれます。それが、年を重ねるに従って段々と白くなって、シルバーバックと呼ばれるようになり、これが完成する頃、人間で言えば30代前半でしょうか、やっとオスに風格が出てくるようです。
 そうした熟年のオスに成長すると、発情を始めた若メスやちょくちょく群れ渡りするメスが誘い出しに乗ってくれるようになります。
 そして、とりあえずは1雄1雌となり、その後順々に別の群からメスを誘い出し、メスを数頭まで増やして1雄複雌群を完成させます。
 このように、ゴリラのオスの婚期は遅く、風格が備わるまでの間、長く単独生活を余儀なくされますので、たいていのオスは皆、いずれ1雄複雌群を形成することが可能となります。
 長く1雄複雌群を形成していたオスが力が衰えた老オスになってしまっても、他のオスに群を乗っ取られることはありません。その群のメスたちが、順次、他のオスから誘い出されて、群を小さくしていくだけです。
 そして、核オスが死ぬと群は崩壊してしまいます。メスは子連れで他群の核オスか、単独オスのもとへ移籍することになるのですが、こうしたときに乳児が子殺しの憂き目に遭うことがあるのです。
 なお、その群に跡継ぎの大人オスがいれば群は崩壊しませんが、ずっと前からいるメスは跡継ぎのオスには性的魅力を感じないようで、自分の子が乳離れすれば、その子を残して群れ渡りすることが多いようです。

 ゴリラの食性はオランウータンと同様に植食性で、熟した果物を好むようですが、そうした果物は十分には得えられませんので、草が主食になっています。柔らかい葉、茎、根などを食べ、特に湿地帯に生えている草を好んで食べます。なお、ゴリラも「アリ食い」の食文化を持っていますが、これについては第2章で説明します。
 ゴリラの群は広く遊動し、主食の草を食べ尽くさずに、後で回ってくる別の群のために残してやったりもしますし、好物の果物はつまみ食い程度にとどめ、他の群やチンパンジーのためにその多くを残すという奇特な習性を持っています。また、食糧が豊富な湿地帯にやってきたとき、別の群が採食しているようであれば距離を置いて静かに待ち続けます。
 なお、チンパンジーとゴリラが生息域を重ね合わせている地域があって、そうした所では各種の果物を巡って食で競合するものの、通常は互いに接近を避け合い、衝突することはありませんが、たまたま両群が鉢合わせした場合の行動について紹介しておきましょう。
 両者がともに好物とする果物が生っている果樹にチンパンジーが先に来ていれば、力では圧倒的に勝るゴリラであっても離れた場所でおとなしく待ち続けます。ゴリラが先の場合は、チンパンジーは“早く場所を空けろ!”とばかり鳴き叫びます。いずれの場合も実力を行使して場所を取り合うようなことはありません。なお、熟したイチジクが大木に鈴生りに生っているような場合は、両群ともに自群の仲間だけではとても食べきれるものではありませんから、互いに意識しながらも下層はゴリラ、中層はチンパンジーという形で併食することがあります。

5 チンパンジーの性生活と社会生態
 チンパンジーは「積極的、活発、快活であると同時に、気分が不安定で落ち着きがない。衝動的で騒がしい。好奇心旺盛。」と、ヤ-キス夫妻が言っておられ、多くの霊長類学者がこれを認めるところです。
 オランウータン研究の鈴木晃氏はチンパンジーの自然観察もされておられ、「採食樹へ到達した際の激しい鳴きわめき、巨樹の板根(平たい大きな根)や地面をたたき絶叫する様は狂気としか思えず、そして彼らはそのような狂気の状態に瞬間的に陥り、そしてじきに何事もなかったかのように平常の状態に覚めるのである。そのような情動的な激しさは、とてもヒトの枠のものとは異なり、…子殺しや肉食といった行為は、…そのような興奮や激情の発露として発達してきたものであって、…意図的なものであるとは私には思えない。」と、氏の著書の中で述べておられます。
 また、霊長類学者の河合雅雄氏は、「ものずごく攻撃性が強くて残虐なんです。チンパンジーのパトロール隊の襲撃なんて、残虐そのものですよ。相手をやっつけて、殺して踏みつけて、血をすすって、それでまた、あとで見に行って楽しんでいるんですよ。」と、おっしゃっておられます。
 これらの全てがチンパンジーの本性であると決め付けてしまっては、彼らに失礼でしょう。「政治をするサル」の著者、フランス・ドゥ・ヴァール氏は、「自然環境では、チンパンジーは、食物をめぐっての競争は、めったに起こらない。しかし、ひとたび人間が餌づけをはじめると、それがジャングルのなかであっても、平和はたちまち乱れてしまう。そのような事態が、ジェーン・グドールが有名な研究をしたタンザニアのゴンベ・ストリームでも起こった。ゴンベのチンパンジーの攻撃性が急速に増加したのは、人間がバナナを給餌したためだ。」と、述べておられます。
 また、チンパンジーの社会では子殺しが頻発していますが、この傾向はどうやら近年になって増えてきているようです。熱帯雨林やその縁辺部の森林破壊により、チンパンジーの生息域が狭められ、また、密漁が盛んになって、チンパンジーは生存の危機に晒され、また、死の恐怖を味わされるようになったからです。かかる事態が続けば、オスのストレスが高じて、よりいっそう子殺し衝動に駆り立てられてしまうことになるでしょう。
 このように、人間が関わったことによって彼らの世界は混乱に陥れられ、その異常な状態を観察しているのですから、かような激情や残虐性というものは決して彼らの本性そのものとは言い切れないです。
 なるべくそうしたものを差っ引いて、鈴木晃氏の著「夕陽を見つめるチンパンジー」(丸善)、河合雅雄氏の著「サルからヒトへの物語」(小学館)、伊谷純一郎氏の著「チンパンジーの原野」(平凡社)などから要約して、彼らの社会を紹介しましょう。

 チンパンジーは、通常、数十頭ないし百頭からなる大きな複雄複雌群を形成し、オス・メスともに単独生活をすることはありません。でも、子持ちのメスはあまり動かず、散開して母子で暮らすことが多いですから、一見すると単独生活のようにも見受けられます。
 遊動域はだいたい一定していて、ある程度の縄張りを持っているようですが、隣接する幾つもの群と遊動域を一部重複させて、友好的にあるいは敵対的に接近することが多いです。
 主食は熟した果物ですが、若葉や花などもどれだけか食べます。なお、サバンナ性の疎開林で暮らすチンパンジーは食糧が乏しいですから広く遊動し、果物の端境期にはもっぱら樹木に生る豆を主食としています。
 チンパンジーの食性で特筆すべきことは時々狩猟を行ない、肉食することですが、これについては第2章で紹介することにします。
 数十頭からなる群にはメスが10頭程度いますが、そのうち独り身の発情可能なメスは3頭程度で、そのメスと数頭いるオスとで性集団を形成します。オスが十数頭もいる大きな群では、性集団は2~3グループに分かれ、各グループがどれだけか離れて遊動することが多いようです。
 なお、こうした群構成は熱帯雨林におけるもので、疎開林では様相を異にします。疎開林は食糧が乏しく、大集団で遊動していてはどれだけも食糧が得られませんので、小さな複雄複雌の幾つかのグループに分かれ、相互に連携を保ちつつ大きく遊動しています。また、同一地域に留まっていませんから、子持ちのメスたちも付いていきます。このように、疎開林では幾つもの群が連なった重層構造を作り出します。
 オス・メスの比率は概ね1対2です。オスが少ないのは、隣の群との衝突や順位争いの喧嘩で深手を負い、それがもとで死ぬことが一因していますが、性成熟したオスはいったん群の外縁へ追いやられ、しばらくの間は性集団に加えてもらえないですから、そうした比率になってしまうと思われます。また、子殺しもその要因になっています。
 性成熟したメスは、群同士が接近したときに気に入ったオスに惹かれて群れ渡りします。もっとも、ゴリラと同様に見知らぬ世界へ飛び出していくのは勇気がいるようで、出自群に留まって子供を産むこともまれにありますが、いずれ群れ渡りします。
 なお、一度群れ渡りしたメスは生涯その群に留まる傾向が強いですが、再度群れ渡りすることもまれにあるようです。
 メスは出自群を別にした余所者同士のことが多く、互いに避け合うのが一般的です。子持ちのメス同士の接触は、ゴリラと同様に子供たちが遊び合っているときで、そのときに間接的に関わり合いを持つことになります。従って、メス間の順位付けはゴリラと同様に弱いものです。
 子育てにオスが関わるかというと、ゴリラと違ってほとんど何もしません。これは、オスは発情可能なメスとの性集団の形成を志向しますから、子供のことなど眼中にないからです。発情メスがいなくて、手持ちぶさたなときに、たまに遊び相手になってやるくらいのものです。
 オスには順位があって、第1順位のリーダーがいます。その特権はメスが発情したときの性交の優先権です。それがためにオスは相争ってリーダーの座を目指すのですが、兄を持った壮年の弟が有利なようです。と言いますのは、兄弟同士は結束が固いようで、弟が壮年になると兄は高順位の長老になっていることが多く、その支援が受けられるからです。
 しかし、メスは低順位のオスを好むこともありますから、リーダーであってもいつも思い通りに事が進むとは限りませんし、発情期にはメスは相手かまわず何頭ものオスに性交を求めるのが普通ですから、どのオスにも性交機会が訪れます。
 なお、メスは10日間程度の発情を30数日ごとに繰り返し、ゴリラと同様に妊娠しても出産直前まで性交することがありますが、出産後の3~4年間の授乳期間中は発情することがありません。
 メスの性交回数について飛びっ切り凄い例を紹介しましょう。2001年に橋本千絵女史が観察されたもので、何と5時間の間に39回も性交したのです。メスは1回性交するとひたすら休んで回復を待ち、リーダーも性交を済ませると休憩に入り、他のオスが性交してもほとんど無視しました。そして、11頭いるオスのほとんどが入れ替わり立ち代り、そのメスと性交したのです。単純計算すると、メスは7~8分に1回の頻度で性交しまくり、オスは平均して3~4回も性交できたことになります。
 こんな例は特別でして、発情中のメスが毎日これだけの性交回数をこなすことは不可能と思われ、平均的性交回数は1日に10回程度でしょう。この回数では全てのオスの性欲を十分には満たせないでしょうが、一度に複数のメスが発情していればオスは満足できることでしょう。
 しかし、オスたちにとって、こうした恵まれた日々が続くことはまれですから、何日も待たされた上に、1頭しかいない発情メスに殺到するケースが頻発し、どうしても性交を巡っての諍いが起こりやすくなります。
 こうした諍いから逃れんとするためかと思われるのですが、相思相愛となったカップルは、時には1か月から3か月という長期にわたって群から離れるという、ハネムーン行動を取ることがあります。
 また、リーダーが特定のメスを格別に気に入ってしまうと、いつも自分の側にいるように仕向け、毎日寝るベッドを自分の近くに作らせたりもします。ただし、夜間は性交することはありません。この対偶関係は1年以上も続くことがあります。

 チンパンジーのオスは出自群から一生出ませんので、皆、子供の頃からの顔見知りばかりで、強い仲間意識を持っています。大人になってもオスが行動を共にしたり遊び合ったりするのも、こうした父系社会に特有の付き合いによるところが大きいようです。従って、特権的リーダーを除いては、秩序だった明確な順位はありません。
 喧嘩が起きたときには、第三者が低順位のオスに味方して喧嘩を止めさせ、その直後に当事者同士が仲直りの挨拶を交わすなど、内部抗争を回避しようとする気持ちが高く、そうした術に長けています。オス同士が対等な社会づくりに何かと気配りしているのです。これは、オス同士は一生付き合っていかねばならず、激闘に至れば後々まで禍根を残すことになり、それでは安寧な生活はできませんから、無用な諍いを避けるのです。
 これに対して、隣接群との接触に際しては、オス同士の堅い紐帯ぶりをいかんなく発揮し、両群相対峙して絶叫し合い、異様な興奮状態を作り出すのですが、肉弾戦に発展することはありません。
 こうした群間におけるオス同士の緊張関係は、自群のメスが隣接群のオスに惹かれて群れ渡りしてしまわないか、という危惧から生ずるものと思われ、メスの浮気には強い嫉妬心が働くようです。
 隣接群との関係は通常このように敵対的ですが、中には両群が混在して採食する例が観察されていて、友好的な群の存在も報告されています。
 こうした友好群は、群が大きくなり過ぎて性集団グループが友好的に分かれ、群が自然と分割されたのではなかろうかと、私には思われます。
 オス同士が幼馴染の顔見知りでない限り、決して両群のオスたちが混在するような状態は生まれ出ないと考えられるからです。と言いますのは、次に紹介するボノボにあっては隣接群と友好的なことが多いのですが、そのボノボでさえ、メスが混在しても両群のオスたちは警戒して対峙し続け、決して混じり合おうとはしないからです。
 なお、このようなボノボ的友好群の存在は、チンパンジーの世界でも数は少ないようですが観察されています。

6 ボノボの性生活と社会生態
 ボノボはチンパンジーに極めて近い種ですから、その食性は肉食の有無を除いては密林のチンパンジーとほとんど同じで、群の規模も同程度ですし、父系の複雄複雌群を形成するのも同じです。
 性格も類似する面がありますが、「ボノボのオスはメスに優しく、メスに多くを譲り、オス・メス仲良く一緒に遊動している。隣接群と敵対することは少なく、メス同士は大変友好的である。」と、古市剛史氏(霊長類学者)は述べておられます。これより、私見を交えながら、氏の著「性の進化、ヒトの進化 類人猿ボノボの観察から」(朝日新聞社)を要約して、彼らの社会を紹介することにしましょう。

 森林性のチンパンジーの生態と、同一環境に住んでいるボノボの生態との大きな違いは、チンパンジーの子持ちのメスは散開してあまり動かないのに対して、ボノボの子持ちのメスは比較的密集し、オスとも混在し、まとまって遊動することです。それによって、ボノボはメス同士の関わり合いが頻繁になり、群の社会構造をチンパンジーとは大きく変えています。
 ボノボ社会の特徴を一言で言えば、それはフリーセックス社会でして、オス・メスともに乱交しまくり、性を満喫しています。
 これは、独り身のメスは常時発情していると言って良いほど発情期間が長い上に、メスは出産後1年もすると、何と授乳期間中であっても発情を再開するからです。このような種は霊長類ではボノボだけです。
 これによって、オスの性需要をチンパンジーに比べて約10倍も賄うことができます。ただし、ボノボのオス・メス比率が概ね1対1であることを勘案すると、実質上は約5倍ですが、これで十分事足りるでしょう。
 オスがメスとほぼ同数になっているのは、命を落とすような闘いは群の内外ともに起きませんし、子殺しもしないからです。
 そして、オスは性をたっぷりと享受せんがために、全てのメスに対して採食時には場所を譲るなど何かとメスに気配りしています。
 そうであれば群社会は平和そのもの、群同士の敵対もなし、となって良さそうですが、残念ながら実情はそうではありません。
 まずは、性成熟した若オスは大人オスの性のライバルになりますから、チンパンジーと同様にいったん群の外縁へ追いやられ、しばらくの間はメスへの接近を断たれてしまい、性交することを許してもらえません。
 次に、オスにはチンパンジーと同様に順位があり、第1順位のリーダーがいます。その特権も性交の優先権です。
 これは、格別に気に入ったメスとは思う存分性交したいからでしょう。もっとも、ボノボのオスは、今、言いましたように性交機会がたっぷりあるのですから、順位も優先権もチンパンジーのようなはっきりしたものではなく、随分と緩いものになっています。
 従って、チンパンジーのオスの挨拶は順位確認を伴うことが多いのに対し、ボノボの場合は対等を強調する挨拶が多いです。これは、リーダーになろうとする野心が小さく、仲良くいこうぜ、といった雰囲気で暮らしているからでしょうが、それでも時にはオスたちは喧嘩します。
 群同士が近接した場合、敵対することは比較的少ないですが、中には仲の悪い集団もあって、力の弱い方の群はひっそりと離れていきます。
 また、群の外縁へ追いやられている若オスが他の群に近付き過ぎて、怪我をさせられることもあります。
 友好的な群同士が接触する場合であっても、オスは互いに警戒の叫び声をあげ、両群が対峙して誇示行動をするのはチンパンジーと同じです。
 それに対して、メスはオスの緊張を尻目に両群混じり合い、メス同士で互いに挨拶を交し合います。メス同士が挨拶を交わすのは友好的なチンパンジーの群同士の出会いの場合と同じです。そして、ボノボの場合はそれに止まらず、相手の群のオスと盛んに性交までします。メスは普段よりも活発に性交するとの報告もあり、実に不思議な行動です。
 両群のオスの興奮が収まっても、オスたちは一定の距離を置いて互いに意識し合い、混ざり合うことはしません。オスにとっては、群同士の出会いはあまり有り難くない出来事のようで、早々に離れようとイライラしているようですが、メスはそれを無視し、納得するまで出会いは続きます。
 オスが群同士の出会いを嫌うのは、隣接群のメスとの新鮮な性交が享受できるものの、相手のオスに嫉妬心を持っていて、自群に属するメスの群れ渡りを危惧しているからと思われます。

 群同士の接触時にメスが他群のオスと性交するのは、彼らの社会では性交がごく普通の挨拶になってしまっているからと思われます。“こんにちわ、お久し振りですね”といった調子です。現代人の場合に当てはめれば、欧米人の男女が久し振りに再会したとき、頬にキスをしたり、抱き合って背中を叩き合ったりするのと同じ感覚と考えて良いでしょう。
 群内においても性交はごく普通の挨拶になっていて、オス・メス間で多用されます。例えば、メスがオスの手にしている食べ物が欲しいとき、性交を代償としてそれを手に入れることがあります。売春行為に思えてしまいますが、彼らにしてみれば単なる挨拶に過ぎません。欧米人の女性が男性に親切にしてもらったら、頬にキスするのと同じ感覚でしょう。
 ボノボの性交時には、子供が中に入ったり、背中に乗ったり、その両方が同時にあったりして、時には数頭が一塊になってしまうこともあります。皆で仲良くご挨拶といった雰囲気で、チンパンジーとは大違いです。
 チンパンジーの場合は、子供は4歳になると半強制的に離乳させられますから、母親にオスが接触しようものなら子供は母親を奪われた感情を露にし、だだこねして母親を困らせる行動をよく取ります。それに対して、ボノボの子供は物心が着く前から母親が盛んにオスと性交していますから、性交は仲良くするための挨拶といった感情しか湧かないのでしょう。
 ボノボの子供は性交遊びを頻繁にしますが、これは、大人との挨拶と考えているようで、相手は必ず大人で、子供同士の場合はないです。
 子供オスはペニスを勃起させて性交をせがみ、大人メスはこれを簡単に許してやります。その回数は大人オスより多くなることがあります。
 子供メスが性交をせがむこともありますが、大人オスは性交の真似をするだけで、ペニスを膣に挿入することは少ないですし、挿入したとしても射精することはなさそうです。

 ボノボのメスにはチンパンジーには見られないレスビアン行為、通称「ホカホカ」が頻発し、これはメス間の主要な挨拶になっています。
 性皮と性皮を互いに擦り合わせ、併せてクリトリスも擦り合うようで、“とっても気持ちいいわ”というような表情を両者がします。
 ボノボもチンパンジーと同様、性成熟した若メスは群同士が近接した機会に他群のオスに惹かれて群れ渡りするのですが、新入りの若メスは、オスと性交する前に、まずは先輩のメスたちと「ホカホカ」をします。
“これからよろしくお願いします”という挨拶を優先させるのです。
 群同士の接触においては、メスはチンパンジーと同様に相手の群のメスたちと互いに毛づくろいもしますが、まずは「ホカホカ」をします。
 この「ホカホカ」は、メス間でトラブルがあったときに仲直りのためにも行なわれますし、何かで緊張したときに安心するためにも行なわれます。
 人の場合で言えば、仲の良い女性同士が手をつないで歩いたり、びっくりしたときに女性同士が抱き合ったりするのと、同じ感覚のものでしょう。
 オス同士の挨拶にもボノボに特有のホモ行為が見られます。尻を付き合わせて睾丸をぶつけ合う「クラッカー」という尻付け行為で、これは喧嘩の仲直りとしても行なわれます。また、木の枝にぶら下がって向き合い、互いのペニスを接触させる「チャンバラ」という挨拶も、まれに行なうことがあります。どちらもオス間の対等性を確認するための挨拶行動です。

 ボノボの社会で、もう一つ大変特徴的なことはマザコン社会であることです。チンパンジーの社会では、オスが大人社会で生きていくためには、年長オスや大人オスとの良好な関係を築き上げていかねばなりませんから、子供オスはある程度大きくなるとオス集団に関心を寄せ、彼らに着いて回るようになります。オス集団から距離をおいて生活している母親の側にいてはこれは叶いませんから、自然と母親から離れていくのです。
 でも、ボノボの社会では、母親はオスたちと混ざり込んで生活していますから、子供オスは母親の側にいても大人オスとの接触が可能です。
 こうしたことから、オスはマザコンになってしまい、大人になってもいつまでも母親を頼りますし、母親は息子を溺愛するようにもなります。例えば、息子がいい歳の大人になってからでも、その息子が誰かと喧嘩を始めれば母親は飛んで行って息子に加担しさえします。
 こうしたことから、オス・メスの力関係がチンパンジーとは逆になり、メスが強くてオスが弱い社会になっています。
 また、群は比較的密集して暮らしていますので、メス同士の関わり合いが頻繁になり、様々な摩擦も生じますから、必然的にメス間での順位付けが、チンパンジーに比べてずっとはっきりしたものになります。
 こうして、メスのリーダーが登場し、群が採食のために移動するに当っての主導権を握りますし、友好的な群への接近の決定権も持っています。
 メスの順位は長幼の序列を基本としつつも、新規参入の若メスを取り込んでの派閥が出来上がり、派閥間抗争までもが生じてきます。そして、派閥の首領同士の喧嘩がメス全体を巻き込んで大騒ぎになることさえあります。こうした抗争を嫌って無派閥を決め込むメスもいます。

 オスのリーダーは、チンパンジーのように最も実力のある者がなる、というのではなくて、メスのリーダーの支援によってその息子に決まることが多いようです。そして、メスのリーダーが死ねば、その息子は母親の支えを失ってリーダーの座から陥落するのです。
 こうした生態からすると、ボノボの社会はメス間の競争が激しい社会に思えてしまうのですが、これは一般的ではないと考えた方が良いでしょう。
 ここに紹介しました事例は餌付けされた群でして、人から与えられた餌の奪い合いが日常化し、喧嘩が絶えないケースでの出来事ですから。
 純粋の野生状態では、メスの派閥というものは、単に気の合った者同士が近くにいることが多い程度のことでしょうし、メスのリーダーはたぶん最年長者に決まることでしょう。
 そして、オスのリーダーも、チンパンジーと同様にオスたちに一目置かれる実力を持った壮年のオスが務めることになるでしょう。現に、メスのリーダーの息子ではないオスのリーダーの存在も観察されています。

 次ページへ ⇒ Ⅱ 大型類人猿の恐ろしき生態とその影響




(本稿は青少年育成上ふさわしくない表現が含まれますので、アダルトサイトでの投稿としました。)




 
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