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Ⅱ 大型類人猿の恐ろしき生態とその影響

ヒト社会の変遷を霊長類社会から学ぶ

Ⅱ 大型類人猿の恐ろしき生態とその影響

1 大型類人猿の子殺しと共食い
 ここまで類人猿の社会生態を概説してきましたが、しかし、彼らは時として身の毛がよだつ恐ろしい行動を取ります。
 子殺しどころか、その子を皆で食べてしまうことがあるのです。
 でも、このような残虐行為というものは、我々現代人が持ち備えている社会倫理を基準として考えるから、そのように思えてしまうだけでして、その昔、人も同じようなことを数多くやってきました。
 一昔前までは、多くの民族が人食いの習慣を持っていました。脳味噌や人肉を皆で食べるのですが、これは、長老なり勇者が死んだときや、戦いにおいて敵の勇者を倒したときに、死者の英知なり勇気を貰い受けんとする宗教的儀式として行なわれたのが大半のようです。
 また、経済的困窮による嬰児殺しは、中世の西欧では頻繁に行なわれましたし、日本でも江戸時代には全国的に「間引き」が行なわれました。赤ちゃんを早速に天国なり極楽へ送り届けることによって人口調整したのです。
 これといった避妊法がなかった時代ですから、人が農耕を始めることによって生じた人口爆発に対処するためには、そうするしかなかったのです。
 これは今日においても行なわれています。南米アマゾンの奥地に住む狩猟採集民、ヤノマミ族がそうで、赤ちゃんは精霊であるとして、白蟻の巣に納めて蟻に食べさせ、その後、巣を丸ごと焼いて天に返すのです。
 このように、人の場合は、その昔には食い扶持を減らすために子殺しが行なわれ、また、一部地域で今日も行なわれているのですが、これは、現代社会における堕胎手術とどれだけの違いもないのではないでしょうか。
 さて、大型類人猿にあっては、以下に述べますように別の目的でもって子殺しをするのですが、これは、人と彼らの価値観の違いによるもので、人の倫理観でもって彼らを非難することは避けねばならないでしょう。

 チンパンジー社会では、前章第5節で触れましたように人間が関わったことにより、彼らの生活環境が荒らされて、近年、オスによる子殺しが頻発しているのですが、その一般的なケースは次のようです。
 オスがいなくなってしまうと、その群は崩壊し、メスたちはちりぢりになって近隣のどこかの群に再移籍せざるを得なくなります。そのときに、乳児を抱えたメスを迎え入れた群のオスが子殺しを行なうのです。チンパンジーの群が崩壊するなどということは、自然の状態では滅多にあり得ないことですが、森林の乱開発や密漁により、地域によっては群が急激に縮小することが多くなり、こうした事態が数多く発生するようになったのです。
 乳児がオスの場合は、その群のオスにとって、その子が成長すれば性を享受する上で強力なライバルになりますから、別の群のオスなんぞ絶対に生かしておくわけにはいかず、まず間違いなく殺される運命にあります。また、乳児を失ったメスは直ぐにも発情を再開することを皆が知っていますから、乳児がメスであっても、殺してしまうことがあるのです。
 でも、チンパンジーの場合は、後で述べますように、子殺しされても被害者のメスがその群に止まらざるを得ない状況下に置かれるのですが、ゴリラの場合にあっては、被害者のメスは子殺しの下手人のオスとは決して懇意になれるものではありませんから、早々に別の群や単独オスのもとに再々移籍してしまうことが多く、子殺し効果はあまり期待できません。従って、ゴリラの子殺しは、人間によって追い詰められてオスが強いストレスを抱えている状態の地域に限って頻発するだけのようです。
 さて、子殺しのやり方ですが、ゴリラの場合は乳児を一撃のもとに即死させて放置するだけですが、チンパンジーにあっては、オスどもが身の毛がよだつ恐ろしい行動を取ります。
 オスが、1頭または何頭かで協力し、メスから乳児を奪い取り、そこへ他のオスどもが加わって、その乳児を生きたまま、たっぷりと時間をかけて、手足を引き千切って食べ、血をすすり、頭蓋骨を噛み砕いて脳味噌をなめ、挙句の果てには、老若男女入り乱れ、内臓や指などの残り物のご相伴にあずかるばかりか、皮まで引き裂いてクシャクシャ噛むのです。
 これはまさに狂乱地獄絵図であり、現実にチンパンジーたちは共食いをしている2~3時間の間、異様な興奮状態に陥ります。
 そして、乳児を殺されたメスは何日か後には発情し、その群のオスども皆と何度も性交を繰り返し、久しく連れ添うことになるというのですから、人には到底理解できない行動です。
 なぜ、このような共食いパーティーが開かれるのでしょうか。
 これは、次のように考えるしかないでしょう。
 ゴリラと同様にオスが単独で子殺しを行なったとすると、被害者のメスは下手人を憎み続け、そのオスの求めをいつも拒否するに違いありません。そこで、下手人は全てのオスを加担させ、皆を共犯者に仕立て上げてしまい、メスの選択権を亡きものにしようとするのでしょう。
 そのためには、単なる子殺しより、いっそう残虐な行為、つまり子食いをオスども皆によって、そのメスに見せ付けるのがより効果的であり、かつ、オスども皆を参加させるのに好都合な方法となります。
 かくして、共食いパーティーが開かれることになるのでしょう。彼らの頭脳からすれば、この程度のことは容易に思い付くに違いないです。
 なお、これに他のメスや子供までが加わるのは、次節で述べます彼らの肉食習慣が大きく影響していると思われます。

2 チンパンジーの肉食
 チンパンジーのオスは、単独または集団で狩りをします。狩猟対象となるのは、霊長類のアカコロブスが最も多く、その他にヤブイノシシ、ブッシュバック(小型のカモシカに似たウシ科の動物)などです。
 狩猟の頻度は、自然の状態では少なめで、人間が入り込んだ地域で頻発する傾向にあるようです。狩猟の回数は、多いところで1年に十数回程度のようで、1回に1匹を仕留めるのが一般的です。
 獲物を捕らえた者に、それを食べる優先権がありますが、一人では食べきれず、オスたちが分け合って食べます。もっとも、仲良くというものではなく、分捕りあいをしたり、仲が良い者だけに分けて、順位争いしている者には与えなかったりと、その群社会の内実を露にし、様々な様相が展開されます。獲物はメスにも分け与えられますが、これは、メスの気を引くためでもあるでしょうが、メスを肉食に慣らさせ、共食いの正当化に一役買わせようとしているようにも思われます。
 肉食は飢餓に瀕した場合の代用食では決してありません。狩猟は通常の食事を行なった後で行なわれますから、腹が減ったから狩りをしようなどという思いは全くないのです。現に、食糧の乏しい疎開林で暮らす群の方が、食糧が豊富な密林で暮らす群よりも、狩猟行動が少ないです。
 興味深い出来事が鈴木晃氏によって観察されています。
 チンパンジーの大人オス2頭と子供オス1頭が、その地域でよく狩猟の対象にしているブッシュバックと疎開林で鉢合わせしたのですが、相互に接近するものの何事も起こらなかったのです。鈴木氏は、こうしたオスの立ち振る舞いから、チンパンジー社会に内的な何かの必然性が生じないことには、決してハンティングに踏み切らないと言っておられます。
 なお、共食いも同様で、直ちには行なわれず、1~2年も経ってから実行されたことがありますから、同じことが言えるでしょう。
 チンパンジーは、いつしかこうした狩猟文化を持つに至ったのですが、ボノボがムササビを、オランウータンがリスをまれに食べますから、狩猟文化はもともと広く大型類人猿全体にあったものと推察されます。
 と言いますのは、狩猟文化を全く持たないゴリラを含めて、彼らには共通して「アリ(蟻)食い」という食文化が定着しているからです。

 なぜに大型類人猿は、アリをしょっちゅう食べるのでしょうか。
 霊長類学者は、動物性タンパク質の補給のためだと言いますが、決してそうではないです。たしかに、肉質たっぷりの幼虫や成虫がいて、大型類人猿は皆、これを好んで食べますが、これは季節的に一時手に入るだけで、平時には肉質がほとんどない固くて消化不可能なアリを飲み込んでいるだけですから、これは、動物性タンパク質の補給にはなっていません。
 「アリ食い」は、人類水生進化説第3章第2節で述べましたように、高タンパク食をとると、体内に尿酸が高濃度に発生し、これによって関節の炎症が起こりやすくなることと深い関係があると思われます。木の枝を腕渡りする彼らにとって、手指の炎症は命取りになる重大な問題です。
 簡単に手に入って関節の炎症を解消してくれる生薬、それはアリです。アリの体内に存在する何らかの物質に薬効があって、中医学(漢方)では、アリの粉末がリウマチの治療薬として使われ、関節の炎症が鎮まることが分かっています。彼らもそれを知っていたのです。
 チンパンジーは、薬草を幾つか知っていますから、驚くに値しません。大型類人猿の共通の祖先の時代に、あるいは種ごとに別々に、同じ発見をしたと思われるのです。これは、次のように考えられます。
 熱帯雨林には、熟すと先が割れ、柔らかく甘いイチジクがあって、そのイチジクにはアリがたくさん入り込んでいるのですが、関節炎を患っている誰かが、アリごとイチジクを食べたことによって症状が和らぐのを自覚できれば、イチジクかアリに薬効があると学習できます。
 そうしたイチジクは滅多に口にできませんから、どこにでもいるアリを拾って食べてみるでしょう。こうして、アリそのものが関節の炎症に効くことを覚え、それ以降はアリを拾って食べるようになります。
 誰かがこれを始めれば、必ず真似する者が出てきて、その群の文化として定着し、やがて他の群にも広まろうというものです。こうして、「アリ食い」が、肉食をする大型類人猿全体の文化になったと思われるのです。
 その後において、肉食をしなくなった種にあっても、樹上での腕渡りをするに当たっては、手指の関節の炎症には神経を使わざるを得ませんから、「アリ食い」の食文化だけは、どの種も皆、残したのでしょう。
 ところで、その昔に大型類人猿が皆、チンパンジーと同様に頻繁に狩猟と肉食をしていたとなると、その当時には、子殺しを頻発させていたものと想像されます。これは、オスたち皆、なんらかの強いストレスがかかり続けたことが原因しているとしか考えられません。
 そのストレスの元は、その昔に何らかの天敵が出現し、あるいは急激に生活環境が悪化したからであろうことは、人間が彼らにどのように関わってきたのか、ここ数十年の歴史から明らかなことです。

3 メスの発情期間の長期化
 オスによる子殺しは、哺乳動物全般に散見されるのですが、特に霊長類に数多く見られます。霊長類120種のうち30種に子殺しが観察されていて、とりわけ母系の1雄複雌群と父系群に顕著なものとなっています。
 霊長類は、そもそも熱帯雨林で暮らしていて、年間を通じて食糧が安定していますから、いつ出産しても子は育ちます。こうしたことから、メスは、年に10~12回も排卵期を持つに至り、そして排卵に先行する発情期が、メスたちにばらばらに訪れるようになりました。
 これによって、ある程度以上の大きさの群にあっては、年間を通して、いずれかのメスが発情している状態になってしまいます。オスにとっては、これは幸運であり、毎日、性を享受できる機会が生まれます。
 しかし、これによって、需給バランスが大きく崩れます。発情メスの数が極端に少なく、それに対して、オスがあまりにも多いからです。
 こうして、オス同士の諍いが恒常化してしまいました。
 これは、温帯に進出した猿にも当てはまります。ニホンザルは秋から冬にかけて、2週間程度の発情を3~4回程度繰り返すのですが、メスの発情は皆、ばらばらに訪れますから、その時期にはメスを巡ってオス同士の喧嘩が絶えません。これも性の需給バランスの崩れによるものです。
 こうして、オス間の諍いが激しくなってしまい、どうしても乳児を抱えたメスたちが、とばっちりを受ける羽目になります。彼女たちは発情しませんから、オスどもには、その母子は邪魔な存在でしかなく、さらに乳児が病気か怪我で死ねば、乳児を失ったメスが直ぐにでも発情することを皆が知っていますから、オスどもはそれを望むようにもなります。
 ですから、オスたちに強いストレスがかかろうものなら、子殺し衝動に駆り立てられてしまうのです。でも、それを実行すると、たいていはメスの信用を失って、性の享受が断たれてしまいますから、普通はブレーキがかかるのですが、ストレスを抑え切れなければゴリラの例のようにやってしまうでしょうし、また、メスがあきらめざるを得ないような状態を作り出せるのであれば、チンパンジーの例のように頻発させてしまいます。
 そうした社会では、メスはいつも苦汁を飲ませられます。発情中だけオスにチヤホヤさせられるものの、普段は余計者扱いされて、子殺しまでされるのですから、メスはたまったものではありません。

 そこで、メスたちは、平穏な群社会を構築するために、発情期間を長くすることで乗り切ろうとしたと思われます。これによって、性の需給バランスを改善し、オスの性需要を満たそうとしたのです。
 卵子と精子の寿命は短く、排卵された卵子の寿命は1日で、放出された精子の寿命は3日です。従って、排卵日を含み、その前3日間だけ発情すれば妊娠可能です。これが正常な姿でして、霊長類にあっても、そうした種がけっこう多いです。ゴリラがそうなっていて、これは、メスを巡るオス同士の諍いが生じようがない1雄群だからです。
 それに対して、オス同士の諍いが激しい複雄群のチンパンジーにあっては、それを何とか鎮めようと、メスたちの努力によって発情日数を大幅に増やしたと考えられます。ヒトには想像妊娠というものがありますが、チンパンジーのメスたちは、正規発情の前後に想像発情するようになったのでしょう。その想像発情の期間は約1週間に及び、その間、正規発情のときと同様に性皮を腫脹させ、盛んに性交を求めるのです。
 我々には、排卵を伴う正規発情と想像発情とを見分けることができませんが、チンパンジーのオスがメスへ接近する度合いに違いがあって、彼らには、その区分けができているのかもしれません。
 何にしても、メスが想像発情するようになったおかげで、オスにとっては性を享受できる期間が約3倍になり、性の需給バランスの改善が大きく進んで、たいそう喜ばしいことになったに違いありません。
 なお、正規発情しかしないゴリラの排卵周期が29日前後なのに対し、チンパンジーのそれは30数日と、ゴリラより約1週間も長くなっています。霊長類の排卵周期は種によってまちまちで、ゴリラと同様にヒトのそれが月の満ち欠けとほぼ一致しているのは偶然と言われますが、満月の月明かりはかなり明るいものですから、排卵周期は基本的にこれに同調していると考えるべきでしょう。それが、何かの事情で長くなったと考えるのが素直な解釈の仕方でして、チンパンジーの場合は、想像発情の日数分だけ排卵周期が伸びたと考えて良いと思われます。
 ところが、メスが何頭ものオスと毎日何回も性交を繰り返していれば、たいていは妊娠してしまいます。哺乳動物一般に妊娠するとホルモンの働きにより、メスは発情を止めます。
 これでは、いくら大きな群であっても、発情中のメスは、ほんの一握りになってしまい、性の需給バランスは決して整いません。
 そこで、チンパンジーのメスは、何と、出産するまで定期的に発情を繰り返すようになったのです。これは、ゴリラやボノボも同様です。
 これによって、オスが性を享受できる機会が一気に10倍近くに増えて、性の需給バランスは整ったやに思われます。しかし、チンパンジーの場合は、これでもまだオスの性需要が過剰になっています。
 これは、哺乳動物のメスは、授乳期間中はホルモンの働きによって発情を止めてしまい、チンパンジーの場合は、子が乳離れするのに3~4年もかかりますので、どうしても発情可能なメスが不足してしまうからです。
 ところで、チンパンジーに極めて近い種で、その形質のほとんどが酷似していながら、子殺しが全く起きていないのがボノボです。
 ボノボのメスの排卵周期は、調査例からチンパンジーと同じと考えて良いです。そうなると、発情期間も同じであって良さそうなのですが、いずれの調査例も、チンパンジーより発情期間がずっと長くなっています。また、ボノボのメスは性皮が腫脹していなくても性交することがあるようですから、通年発情していると言っても過言ではないでしょう。
 これは、メスにとっての性交という行為が、メス本来の排卵に伴う生理的欲求から離れてしまい、単にオスの性的欲求を満たすためだけに行なわれるようになったからと考えるしかないでしょう。
 ボノボの正規発情と想像発情期間以外の、生理的欲求から離れてしまっている性交は、擬似発情として位置付けしたいです。ここで、お断りしておきますが、霊長類学者においては、正規発情・想像発情・擬似発情という用語の区分けはなさっていません。これは、私の独自の命名の仕方です。ただし、正規発情以外のものを、ニセ発情と呼ばれることはあります。
 いずれにしましても、こうしたボノボの擬似発情によっても、まだまだオスの性需要を完全には満たしてくれることはなかったと思われます。
 と言いますのは、チンパンジーは授乳期間中は発情を止めるのに対して、ボノボは出産後1年もすると授乳中にもかかわらず、排卵を伴わない発情を再開するからです。哺乳動物としては非常に珍しい現象です。
 これも、擬似発情として位置付けできるでしょう。そして、これにより、大半のメスが性の対象となって、オスの性需要に対する非常に大きな供給力となり、やっとオスの性欲を完全に満たすことになったのです。

4 ボノボの通年発情説
 チンパンジーとどれだけも形質の違いが認められないボノボが、なぜに通年発情に近いところまで発情期間を長くし得たのでしょうか。
 これについての仮説は、まだ、どんな霊長類学者からも発表されていないようですが、私が思うに、これは、過去においてオス同士の性の享受を巡る諍いが熾烈を極めた時期があって、それが元でオスどもによる子殺しが頻発したからだ、と考えるしかないです。
 その子殺しを、メスたちが必死に防ごうとして取り得た唯一の方策は、通年発情が可能な体質を獲得することです。そして、そのようにメスたちが変身できれば、オスの性欲が十分に満たされて、オスどもはおとなしくなり、子殺しをするに至らないのです。そこで、メスたちは努力に努力を重ね、ついに通年発情に近いところまで発情期間を長くすることに成功したのです。こうして、今日のボノボ社会に見られるフリーセックス社会が誕生した、と結論付けて良いと私は思うのです。

 これは、いつ、どこで、どのようにして起きたのでしょうか。
 チンパンジーとボノボとの地理的隔離は、DNAの違いから推計されているように、約200万年前に生じたのは確実でしょう。
 また、ボノボは、コンゴ川の南側に広がるコンゴ盆地に隔離された状態にありますから、コンゴ川が隔離の原因と推察されます。
 さて、そのコンゴ盆地については、気象・地勢・地質・地球物理学上の知見から、興味ある幾つかの事実が存在します。
① 大地溝帯の西側に連なる山脈では大量の雨が降り、その雨はコンゴ川及びコンゴ盆地内の中小の河川と湿地を流れて、大西洋に注ぐ。
② コンゴ盆地は、広大な区域が沈下してできたもので、わずかな起伏が複雑に生じているものの、平坦地である。
③ コンゴ盆地の西端は若干土地が隆起した状態にあって、大西洋に接し、コンゴ川の河口付近は川幅が極端に狭く、谷を形成している。
④ 大地溝帯は地殻の割れ目で、1000万年前から地殻変動を起こし、その西側で土地が隆起、沈降し、それに伴い大河の流れが変化する。

 これらの知見から、ボノボの生活環境の変化は、次のように想起されます。
(1) 約200万年前に大きな地殻変動が起き、はるか北を流れていた大西洋に注ぐ大河は、現在のコンゴ川の場所に位置を変えてしまった。
 これによって、ボノボはチンパンジーから地理的に隔離された。
(2) それと同時に、あるいはその後に、コンゴ川の河口付近で地殻変動が起き、土地が隆起し、大西洋への出口が塞がれてしまった。
 これに伴って、コンゴ盆地の水位が上がって広大な湖が誕生し、陸地は大小様々な島々として所々に残すだけとなった。
 こうして、ボノボの生息域は急激に狭まり、水生環境に置かれた。
(3) その後、コンゴ川の河口付近に立ちはだかっていた壁は、湖水の越流によって順次えぐられて谷を形成し、何万年か後には湖が消滅して、コンゴ盆地は所々に湿地を残す元の姿に復帰に、現在に至っている。

 この想定を元にし、ボノボの生態の変化を推測することにしましょう。
 上記(2)ののコンゴ盆地の封鎖による水位上昇は数年がかりでゆっくりと進んだことでしょう。これによって、低地に住むボノボの群は、より高い所へ少しずつ遊動範囲を移させざるを得なくなります。これは縄張り侵犯であり、玉突き状に全域を襲ったに違いありません。
 縄張りが小さくなれば、彼らの主食の果物が当然に不足しますが、その不足分を樹木の若葉や花などで十分補い得る環境にあったでしょうし、また、ボノボは果物が乏しい時期には柔らかい草や茎を食べますから…これは、その当時に生まれ出た新たな食性と思われるのですが…こうした代替食糧でもって、決して餓死することはありません。
 しかし、大規模な縄張り侵犯は、戦争を頻発させたに違いありません。

 ここで、実際にあったチンパンジー戦争を紹介しましょう。
 その戦争は2例観察されていて、ともに人間による乱開発で自然環境が荒らされ、縄張りの位置変更を余儀なくされて、度重なる接触による群間の敵対意識が高じた結果として起こったものです。
 どちらの例も、大きい方の群が小さい方の群を壊滅させました。大きい方の群れのオス数頭による度重なる奇襲攻撃により、小さい方の群のオスが1頭ずつ順次殺され、最後には全員が殺されてしまったようです。
 この奇襲攻撃に際し、メスの中にはオスと一緒に果敢に立ち向かい、命を落としたり、大怪我を負った者もいますが、大半のメスは開戦以降五月雨的に戦争を仕掛けてきた群や隣接群に順次移籍しました。
 その移籍の過程、あるいは奇襲攻撃時に子殺しがあったと考えられています。ほとんどの乳児や子供が行方不明になったからです。
 なお、この2例とも、食糧の確保のためではなく、発情メスの群れ渡りを危惧しての嫉妬心から生じたものと推測されています。

 さて、玉突き状に縄張り侵犯を始めるしかなかったボノボの群のオスたちは、極度にストレスを高めてしまい、全ての隣接群同士が戦争状態に陥ったことでしょう。まずは、オス同士の殺し合いが始まり、そしてオスどもは、他群への侵入時に子殺しを頻発させたに違いありません。
 コンゴ盆地の湖面の拡大による居住可能地域の狭小化は数年で収束したに違いありませんが、群間の戦争は、決して直ぐには止みません。
 縄張りの大きさが、従前に比べて、たぶん1桁下になってしまったことでしょうから、群同士の衝突は決して止まず、戦争は恒常化します。
 そして、生息数が1桁小さくなるまで、延々と殺戮が繰り返され続け、縄張りの大きさが従前の規模に近いところまで回復したところで、やっと戦争は終息を向かえたことでしょう。
 そこまで到達するには、随分と長い年月を要したものと思われます。
 なぜならば、恒常的に激しい殺戮戦が展開されても、その目的は、メスの再移籍の防止と、他群のメスを自群に移籍させることにあるのですから、大人オスは殺しても、大人メスを殺そうとはしないからです。
 加えて、子殺しを頻発させても、メスは直ぐに妊娠しますから、出生数は急増し、どれだけかの子供は大人へと成長できてしまうからです。
 なお、オスだけが大幅に数を減らすこともありません。強い方の群は、多くの大人オスが生き残ったでしょうし、その群で生まれたオスは、自群のオスによって殺されることはないですから、補充ができてしまいます。
 一方、ほとんどのメスは、子殺しの憂き目に晒されたことでしょう。
 たとえ、強い方の群に移籍を果たしたとしても、隣接群のオスどもが、乳飲み子を抱えているメスを見付けでもすれば、そのメスの再移籍を促さんとして、乳児が狙われるからです。
 こうして、ボノボ戦争は、百年戦争ならぬ千年戦争となり、幾世代にもわたって延々と続いたことでしょう。
 その間、子殺しは止むことを知らず、その都度メスたちは授乳ストップによる発情再開を繰り返すしかなくなり、これが累代にわたって続いたことによって、ボノボのメスたちは、ついに通年発情が可能な体質を獲得してしまったと考えて良いのではないでしょうか。

 人間社会においては、大規模な戦争によって、社会体制の変革を生ずることが往々にしてあります。同様に、ボノボにおいても、戦争によって、チンパンジーとは異なる生態が生まれ出たのではないでしょうか。
 森林性のチンパンジーの群は、乳飲み子を抱えたメスがオス集団から離れて散開して暮らしているのに対し、同じ森林性であっても、ボノボの群の場合は、そうしたメスがオス集団の中に入り込んで、比較的密集して暮らしていることを前章で述べました。こうした異なった形態をボノボの群が採るようになっているのは、メス同士が互いの摩擦を我慢しながらも、隣接群のオスどもによる子殺しから逃れようとした、メスたちの防衛作の名残と考えるしかないでしょう。
 また、ボノボのメスが派閥を形成するのも、複数のメスが協力し合って子を守ろうとした、その名残ではなかろうかと思われます。
 そして、大人メスが、隣接群の大人オスと性交までして非常に友好的に接触しているのも、子殺しの防止のためであったでしょう。
 それに対して、大人オス同士は、今日では性を満喫しているのだから、もはや敵対する必要はどこにもなさそうなものを、それでも群間で異常な緊張関係を作り出しているのは、その昔の戦時迎撃態勢が染み付いてしまっているからと、考えて良いのではないでしょうか。
 なお、ボノボの直立二足歩行に近い体型への骨格の変化や、膣口の腹側への多少の移動とペニスの長大化は、突然として生じた水生環境への適応に伴って起こったと考えておかしくないです。ただし、ヒトのようにまでは進化しなかったのは、コンゴ川の河口付近の壁が湖水の越流によって急速にえぐられて谷となり、湖が段々と狭まって、本格的な水生環境は、わずか数万年で消滅してしまったからと考えて良いと思われるのです。
 こうした数々の状況証拠からしても、この仮説は成り立つと思うのですが、いかがなものでしょうか。

<補記>
 本章第4節(ボノボの通年発情説)で、メスの発情という生理現象の長期化が起こった要因を、極力客観的に捉えて仮説を建てたところですが、第3節(メスの発情期間の長期化)…これも仮説ですが…においては、“子殺しを防ごうとするメスの努力”という“目的論”で物語りました。生物進化を語るとき“目的論”を登場させるのは明らかな誤りではありますが、読者が理解しやすいようにあえてそうしました。
 第3節について客観的に捉えて物を申すとなると、非常に複雑になってしまいます。ボノボのケースほどには子殺しが頻発しない状態で危機が過ぎていったが故に、チンパンジーなどは授乳期間中に発情するまでは至らなかった、などなど、危機の程度で獲得形質に違いが出てきたと考えられることを子細に説明せねばなりません。また、その後、穏やかな社会が長く続くことによって、一旦獲得されたかにみえた想像妊娠というものがゴリラの場合は消えていったとも考えられ、その説明も根拠をもって行なわねばなりません。そうしたことどもを詳細に論述したとしても、本章においては格別に意味あるものにはならないと考え、あえて“目的論”を持ち出し、簡潔に語ることにした次第です。

次ページ ⇒ Ⅲ 霊長類の社会生態
 

(本稿の記事は青少年教育上ふさわしくない表現が含まれますので、アダルトサイトでの投稿としました。) 




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