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夕陽を見つめるチンパンジー

 「夕陽を見つめるチンパンジー」(丸善ライブラリー)と題した本があります。霊長類学者、鈴木晃氏が書かれたもので、大型類人猿わけてもチンパンジーとオランウータンの社会生態観察を記録した内容が中心となっています。その中で、氏が野生のチンパンジーを観察する中で感動された出来事があり、それが本の表題にもなったのです。
 それをここに紹介しましょう。小生は“ヒトもチンパンジーも同じだなあ”と感じたのですが、皆さんはどうお感じになられましょう。主人公は1頭の若い大人のオスです。

 その日私は、川の上流部の支流がいくつか合わさる地点に発達した低木やツル類のからみ合った低い茂みの中で、10~20頭余りの小さくないチンパンジーの集団に遭遇しては逃げられる、ということを繰り返していた。チンパンジーは茂みの中の地上にいて、静かにやっと近づいたと思うと逃げられていた。至近距離に近づいたと思っても茂みの陰で姿は見えず、彼らは時折「フー、ウー」といった、有声音にならない、ささやき声のような音声で互いに連絡し合って、いつとはなく姿を消してしまったりした。川辺林の中に夕陽が斜めに落ちてくる頃、その日の不出来なチンパンジーとの出会いにしびれを切らして私は帰りかけようとしていると、1頭の若いオスのチンパンジーが、小高い樹に上ってきた。そのチンパンジーは、するすると樹のずっと梢近くまで上がっていくと枝に座り込み、遠くの方を眺め出した。私は最初、彼が何をしているのかわからなかったし、ただそこで休んでいるくらいにしか考えていなかったのだが、やがて、空が紅く染まり、川辺林のほの暗い林床まで、その紅い夕陽がさし込んでいるのに気づいた時、私は、そのチンパンジーが、沈んでいく太陽を、染まっていく夕空を眺めているのだということを確信した。
 彼はいつまでも、夕陽を眺めながら、そのままの姿勢で座っていた。他の個体は近くにはいないようであった。彼は、私がその樹の根元のすぐ近くにいることを知りながら、身動きもしないで西の空を眺めていた。やがて、夕闇がせまり、川辺林の中は暗くなったので私は帰路に着こうと、川辺林の外の草原に出た。それでもそのチンパンジーは川辺林からひときわ梢を出したその樹上で、座ったままのシルエットを夕焼けの空に映し出していた。
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