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人類水生進化説 第2章 ヒトの進化は並の進化

第2章 ヒトの進化は並の進化

 序章で取り上げましたヒトの4つの特徴は、霊長類にあっては、とても珍しい形質と言えますから、ヒトがヒトたる所以となりましょう。
 しかし、哺乳動物の中には、これらの特徴を備えたものが、個別にではありますが数多く見られます。さらに、脊椎動物にまで広げてみてみますと、ヒトよりも格段にその特徴を備えたものがいて、ヒトだけが突出した進化をしているのではなく、並の進化しかしていないことが分かります。
 本章では、先の4つの特徴のうちで、誰もが、ヒトの優秀性の表われと思い込んでいる「直立二足歩行」と「大きな頭」について、それらがどのようにして進化してきたのか、これまでの研究成果を紹介することにしましょう。

1 直立二足歩行はヒトの専売特許?
 ヒトは皆、拍手喝采を浴びるサーカス団員のようです。バカでもチョンでも、1歳になれば、誰もが直立二足歩行するようになります。初めのうちはヨチヨチ歩きで危なっかしいですが、教えなくても段々上手になり、7歳にもなれば、直立姿勢を保ったまま二足でもって、見事な走り方をも披露するようになります。
 これを眺めるヒト以外の動物たちが皆、“ヒトは何と芸達者な動物なんだ。”と、感心しているに違いないと、人は勝手に解釈して喜んでいます。
 そして、人は、“人間様は、直立二足歩行という、他の動物にはできない、高度なバランステクニックが要求される芸当を、難なくこなしてしまう優れた動物である。”
と、自惚れるのです。
 でも、脊椎動物の世界において、直立二足歩行のオリンピックを開催すれば、金メダルが確実視されるのは爬虫類のトカゲです。中でもバシリス・トカゲの走りっぷりは実に見事です。彼らは、水面であっても、両足が水中に没することなく、直立姿勢を保ったままで易々と二足で走り切ります。
 毎秒20歩という、信じられないような素ばしっこい足の動きが、それを可能にしているのです。しかし、ヒトはトカゲとはあまりにも離れた種ですし、バシリス・トカゲは体が極小ですから、ヒトと比べるのは不公平だとのご意見もありましょう。

 そこで、哺乳動物に限定し、さらに絞り込んで霊長類の世界でオリンピックを開催してみましょう。すると、金メダルは、完全にヒトの掌中に収まります。
 そこで、人は、“どうだ、俺たちが一番だ。”と、自慢するのです。
 なお、銀メダルはテングザルが、銅メダルはボノボが手にするでしょう。
 テングザルは、ボルネオ島の潮の干満が激しいマングローブの森に住んでいて、通常は木の枝から枝へと渡っていくのですが、向こう岸に渡るときには、深ければ泳ぐしかないですが、足が立つ所であれば直立姿勢で水中歩行するしかありません。これが毎日のように繰り返されるのですから、直立姿勢の癖がついてしまって、地面を歩くときも、つい直立して二足で歩いてしまうことが多くなるのです。
 彼らが1列の縦隊になって歩くその様は、ヒトにそっくりだと言います。

 ボノボは、一昔前までピグミーチンパンジーと呼ばれ、顔付き、体付きは、チンパンジーとそっくりで、素人には見分けが付きません。アフリカの広大な熱帯雨林の中を流れる大河、コンゴ川の南側に大きく広がるコンゴ盆地に住んでいます。
 彼らが移動するときは、通常は、木の枝から枝へと腕渡りしますが、隣の木が少し離れていると、地上に降りて歩くしかありません。体が大きいですから、普通に見られる真猿類のように、ジャンプして隣の木の枝に飛び移ることができないからです。
 ボノボの地上における通常の歩き方は、チンパンジーと同じナックル歩行です。
 軽く拳を握り、指の背を地面に着けての四足歩行で、真猿類のように前足の裏を地面に着けた完全な四足歩行ではありません。
 また、真猿類が地上を歩くときは、背骨は地面と水平ですが、彼らの背骨は地面とほぼ45度の角度を保ち、長い手の先を軽く地面に着けるだけで、四足歩行と直立二足歩行との中間型です。
 なお、チンパンジーは水生環境とは無縁の地域に住んでいますから、地上を歩くときは、いつもナックル歩行します。そして、広がった水面を極度に怖がり、決して水に浸かろうとはしません。
 ところが、ボノボが住んでいるコンゴ盆地は、雨期に地面が水面下に没する所が多く、彼らが移動するために地上を歩こうとすると、たいてい腰まで浸かる程度の水深がありますから、直立に近い姿勢でもって水中歩行せざるを得なくなります。
 特に、背の低い子供は、浅い所でもそれを強いられ、水深が深ければ背筋を真っ直ぐに伸ばし、爪先立ち歩きせねばならなくなります。それでも足が立たなければ、泳ぐしかないです。
 ボノボは、雨期には、こうした生活が恒常的になりますから、子供は、成長するに従って、背筋が真っ直ぐに伸びる傾向が出てきて、直立二足歩行に多少とも近い体型となり、チンパンジーと比べて、気持ち足長になっています。
 こうして、生活環境の相違によって、ボノボは、いつしか、以前同種であったチンパンジーと、少々異なった体型に進化したのです。

 ところで、メダル争いにダークホースがいます。
 それは、日光猿軍団です。ニホンザルである彼らは、野生のままであれば完全な四足歩行ですから、オリンピックには参加することに意義がある程度のみっともない直立二足歩行しかできません。
 でも、幼少の頃から、毎日長時間にわたって直立二足歩行を訓練させると、楽々とそれができるようになってしまいます。
 なぜならば、骨格が野生の状態とは大きく異なって成長するからです。
 日常生活で直立二足歩行が義務付けされれば、どんどん成長する骨格は、ボノボ以上に、それに適するように改変されてしまうのです。
 こうして、サーカス団員のニホンザル、日光猿軍団が出来上がり、直立二足歩行という“高度なバランステクニック”を身に着けてしまうのです。
 これを見る観衆たちは、その芸達者なことに拍手喝采し、“よくぞここまで人間様の高等な動作を真似できるものだ。”と、褒め称えるのです。
 ここまでくると、人の自惚れも甚だしいです。
 謙虚に考えれば、ヒトはトカゲの足下にも及ばない“愚足”の持ち主で、また、1歳児や2歳児のジュニアオリンピックを開催すれば、ヒトよりも日光猿軍団の方に軍配が上がることは間違いないのですから。
 “お前たちは、1年経っても2年経っても、下手くそな歩き方だなあ。”と、猿たちにバカにされていると思った方が良いでしょう。

2 直立二足歩行は地球の重力の作用で起きる
 背骨を持つ動物を脊椎動物と言いますが、その骨格の形成は地球の重力によって決まることを、西原克成氏が、その著「生物は重力が進化させた」(講談社)の中で述べておられますので、その要旨を紹介しましょう。
 なお、前節で紹介しました日光猿軍団の説明は、その書からの要約なり、引用させていただいたものです。

 まず、ヒトの骨格の形成については、「ウォルフの法則」というものがあります。
 1892年にドイツの医学者ウォルフが、約20年間にわたっての豊富な骨の手術の臨床経験を元にして提唱しました。
 それは、「骨の形と構造は、使い方を一定にしておくと、その使い方に従って使いやすい形に変化する」という経験則です。
 骨を削ったり、いったん切って、また、繋げたりする手術をした場合に、術後にどうなるかというと、骨の形が微調整されて元の形に戻ったり、動かす機能が元に戻るということは決してありません。術前とは異なった動かし方に適合するように、骨の形が変わります。そして、骨の形が変われば、いっそう動かし方が変化します。こうして、どんどん骨格が変わってしまうのです。

 骨格の形成に関してのこの経験則を数理的に検証されたのが西原氏で、「ウォルフの法則」は学問としての完成をみました。
 その検証内容の詳細説明は省略しますが、それを基にして、引き続き日光猿軍団を例にして解説しましょう。

 四足動物が直立二足歩行しようとすると、地球の重力環境の下においては、血液や体液の流れが大きく変わり、それに伴って、部分的に流動電流の大きな変化が生じます。
 荷重が大きくかかるようになった部位では流動電流が強まって、骨の未分化細胞の遺伝子の引き金が引かれ、骨の作り替えが激しくなって、その部位が成長するのです。逆に、荷重が開放された部位は流動電流が弱まり、骨の成長が止まります。
 よって、成長期の幼少からニホンザルに直立二足歩行をさせれば、体型の大きな変化が容易に起きてしまうのです。
 このように、「ウォルフの法則」には、地球の重力が大きく作用しているのです。

 さて、直立二足歩行を絶えず強いられる環境はどういう所でしょうか。
 それは、前節でテングザルとボノボについて述べましたとおり、水生環境です。
 この環境に絶えず置かれ続ければ、1代でもって直立二足歩行が完成してしまいますし、その子も同一行動を取りますから、同一の体型が、子孫に連続して生まれ出ます。これが累代にわたって引き継がれるとなると、その骨格形成がやがて遺伝するようになってしまうのです。
 これを、「獲得形質遺伝」説と言いますが、これについては第3章で詳述します。
 また、これも第4章で詳述しますが、ヒトの祖先が完全な直立二足歩行をするようになったのも、質の高い水生環境に馴染んだからに違いありません。
 でも、その後、ヒトの祖先は専ら陸の生活をするようになったのですから、ナックル歩行に戻れば良かったのですが、かなり手短・足長の体型に進化した後でしたので直立姿勢を取り続けるしかありませんでした。
 と言うよりは、動物は一般に、いったん身に着けた行動様式を変えようとはしない保守的な性格を持っていますから、辛くても、今までの姿勢が取れるのであれば、それを崩そうとはしないのです。
 加えて、子供は、大人の行動様式を学習しつつ、つまり、その真似をしながら成長しますから、行動様式は容易には変わらないのです。

 関連して、ここで、ヒトの手短・足長への体型の進化などについて、触れておきましょう。ただし、以下のことは、私の独自の解釈の仕方であることを、あらかじめお断りしておきます。
 水生環境にどれだけか馴染んでいるボノボは、既にチンパンジーに比べて、少し足長になっていて、ヒトは、これが極端に顕著になっています。
 これは、「ウォルフの法則」の応用解釈になりますが、水中では足の骨への負荷が開放されるものの、陸に上がれば一気に荷重がかかり、これが頻繁に繰り返されるとなると、流動電流が度々激変して、その刺激変化で骨の作り替えが進み、骨が成長したと考えて良いのではないでしょうか。 
 なお、類人猿の手が、他の霊長類に比べ極端に長くなったのも、同様にして、木の枝へのぶら下がり行動を度々行うことによって、手の骨への荷重の開放と負荷とを頻繁に繰り返した結果と考えて良いでしょう。
 次に、ヒトの手は、チンパンジーやボノボに比べて、随分と短くなっています。
 これは、正に「ウォルフの法則」によるもので、直立二足歩行が習慣化されると、手への荷重が開放された状態が長く続きますから、流動電流が小さくなって、骨の作り替えが進まなくなり、骨の成長が抑制されてしまうからと考えて良いでしょう。
 3つ目に、哺乳動物一般に、わけても霊長類の大半の種は、オス・メスの体格の差つまり性的二形性が認められます。一般的に、オスがメスより2~3割大きいですが、中には倍の大きさになるものもいます。
 こうなったのは、オスが威勢を誇示したいがため、体を精一杯大きく見せかけようとしたからではないでしょうか。
 例えば、木の枝にぶら下がりながら、その下の枝を足の指でつかみ、全身を引き伸ばすという動作をした後に、地面に飛び降りて、跳ねたり跳んだり地面を叩いたりすれば、全身の骨の荷重が開放されたり、負荷がかかったりしますから、骨の成長が促進されると考えて良いでしょう。
 なお、これは、チンパンジーのオスによく見られる恣意的な行動の一つです。

3 直立二足歩行する大型類人猿はたくさんいた
 アフリカの熱帯雨林は、その昔は現在と違って、ずっと広大で、かつ、今よりもっと湿潤であった時代が長く続いたようです。
 これは、大陸移動や造山運動による気流の変化の影響もあるようですが、地球がかなり温暖化していたからと思われます。
 2~3,000万年前から約1,000万年前までは、熱帯雨林が広大な幅で連続して、サハラ砂漠を含むアフリカからアラビア、インド、東南アジアまで連なっていた時期があって、その縁辺部の地中海沿岸にも数多くの類人猿が生息していたようです。
 なお、地中海は小さな湖であった時期もあり、また、アラビア半島はアフリカ大陸と繋がったり、切り離されたりを繰り返したようで、その地形は、現在とは大きく違っていました。
 こうした環境下において、約2,300万年前に誕生したと言われています類人猿はその後ヨーロッパ、アジア、アフリカでたくさんの種が繁栄したようで、地中海沿岸で類人猿の化石が数多く発掘されています。ここは、たまたま化石が残りやすい条件が整っていますから、発見例が多いのでして、熱帯雨林の内部は化石が残り難い土壌になっていて、現在の熱帯雨林での類人猿の化石の発見は、1例のみ、それも歯の一部だけです。
 その後、地球を襲った寒冷化とそれに伴う乾燥化によって、熱帯雨林は、大幅に縮小し、ほとんどの類人猿は、絶滅してしまいました。
 現生類人猿の生息地は、アフリカ中央部の熱帯雨林やその周辺部と、東南アジアの熱帯雨林に分断されてしまって、アフリカでは先に紹介しましたチンパンジーとボノボそしてゴリラの計3種、東南アジアではオランウータンと数種類からなるテナガザルだけになっています。

 さて、熱帯雨林が広大であったときには、湿潤であったがゆえに、当然にして水生環境が大きく発達していたことでしょう。そして、100万年に1回程度は、どこかで、何らかの大規模な地殻変動が起きて、大河の流れが大きく変わったり、大きな水域が生まれたり、また、消えたりを繰り返したことでしょう。
 その水生環境の特徴は、地理的隔離を起こしやすいことです。
 そうなると、同種のものであっても、独自に進化するしかないのです。
 先に紹介しましたボノボがその良い例で、約200万年前に、コンゴ川によって地理的に隔離され、その後の水生環境の発達によって、行動様式が変化し、チンパンジーとは別の種になってしまったのです。
 その昔には、熱帯雨林のあちこちに生じた水域に取り残された大型類人猿の中には、ボノボ以上に絶えず水中歩行を強いられ、水に親しむ者が数多く登場したことでしょう。そして、直立二足歩行に適した骨格が比較的短期間の経過でもって固定されてしまったに違いありません。
 そうした大型類人猿が、熱帯雨林に広がる水域ごとに、別々に誕生した可能性が大きいと思われます。
 1つの例が、サハラ砂漠の中央に位置するチャド湖の近くで発見された、約700万年前のものと言われる最古の“人類”化石です。
 でも、これは、当時そこまで熱帯雨林が広がっていて、チャド湖の水域にも、直立二足歩行する大型類人猿が生息していたと考えるべきです。
 そして、その地は、その後の乾燥化によって、水生環境が狭まり、ついに、砂漠と化し、その種は、絶滅してしまったと考えるのが自然です。
 また、人類誕生の地、アフリカ東部の大地溝帯の所々で発見されている4~500万年前のものとされる何種類かの“人類”化石も同様に、ヒトとは別の大型類人猿の可能性が大きいと思われます。
 と言いますのは、これらの化石は皆、直立二足歩行に適した体型をしているものの、「犬歯の退化」がほとんど認められないからです。
 顕著な「犬歯の退化」があって、はじめて、それを「ヒト」と呼ぶべきでしょう。
 私は、そう考えます。

4 大きな頭の不思議
 ヒトの第2の特徴は、大型類人猿と比べて脳が約3倍も大きく、従ってヒトは知能が高いと言われます。
 でも、霊長類と近縁のネズミの脳は、ヒトの小指の先っちょほどの0.4グラムしかありませんが、このネズミとて十分に学習能力がありますし、教えれば芸もする賢い動物です。
 逆に、ヒトより脳が大きい動物はと言うと、序章で述べましたように、ちゃんといて、クジラがそうですし、ゾウもそうです。
 ヒトの脳の重量は高々1,500グラムであるのに対し、クジラは何と9,000グラム、ゾウでも4,000グラムにもなります。その大きな脳を持つ彼らは、ヒト以上に知能が高いかというと、決してそうだとは言えません。
 そこで、ヒトの脳が優秀なのは言葉を話すようになったからだ、と言われたりするのですが、これも疑問視せざるを得ません。
 と言いますのは、チンパンジーの集団を、長年にわたってじっくり観察した記録を見てみますと、彼らは皆、物凄いことを考えているように思えてしまうからです。
 それは、「政治をするサル」という本(平凡社ライブラリー)に書かれています。

 舞台はオランダのアーネム動物園で、放し飼いにされた20数頭のチンパンジーの数年間にわたっての詳細な観察記録を綴ったもので、その内容は、大人オス3頭による赤裸々な権力闘争を中心としています。
 その権力闘争は、壮大なドラマであり、戦後間もなくの吉田政権誕生前後に繰り広げられた、政党・派閥の野合や、足の引っ張り合いに酷似した駆け引きが、実に見事に展開されるのです。
 彼らは、決して行き当たりばったりの戦術を取るのではなく、先を見た戦略的布石を打ち、政敵に同調するメスグループの分断を画策しつつ、オス同士の野合と連合によって、ボスの座を仕留めたり、はたまた転落させたりと、高度な知恵を働かせるのです。そして、大人オス全員が、一度は政権の座を掌中にするのです。

 私のような凡人は、それに舌を巻き、何と知恵が働く奴らだと圧倒させられてしまいます。序章で述べましたチンパンジーとヒトの頭脳に大差ないという霊長類学者の見解は、こうした観察からも生まれ出たようです。
 また、脳の大きさがチンパンジー並みであっても、現生人類とどれだけも変わらぬ知恵が発揮できることを裏付ける状況証拠があります。三井誠著「人類進化の700万年」(講談社現代新書)から、その要旨を紹介しましょう。

 それは、小人原人のホモ・フロレシエンスです。1万数千年前の火山噴火で、残念ながら絶滅してしまったのですが、インドネシアのフローレス島に住んでいて、身長は1メートル程度、体重は20~30キログラム程度で、チンパンジーよりかなり小型ですが、脳の大きさはチンパンジー並みでした。
 この島は、近隣の島々が大陸としばしば陸続きになったのに対して、孤島であり続けました。大昔に、原人が筏か丸太に乗り、あるいは泳いで渡り住んだのでしょう。
 そして、この島は、隔絶されているがゆえに、天敵となる猛獣がおらず、ために、動物が小型化するという「島嶼(とうしょ)化」現象が起きたと思われます。
 既に絶滅していますが、この島で「島嶼化」による小型のゾウの化石が発見されていますから、この島の小人原人も「島嶼化」したと思われるのです。
 なお、ゾウは泳ぎが得意ですから、その昔に大きな体のゾウが、この島に泳いで渡って住み着いたのは確かでしょう。
 こうした孤島における哺乳動物の「島嶼化」の例は、フローレス島に限らず、他の孤島においても認められていますから、信憑性が高いと思われます。
 その小人原人が使っていた石器は、同時代の現生人類が使っていたものと、どれだけも違わない高度なものでしたし、また、頭蓋骨の調査から、言語中枢の側頭葉が発達していたことも分かり、言葉を話すことができる“小さな賢人”であったと想像されるのです。

 こうしたことからも、ヒトの脳が大きくなったのは、言葉を話し、それによって絶えず頭を使うようになったからだ、とは決して言えないのです。
 チンパンジーと同程度の小さな脳であっても、ヒトと全く違わない、必要かつ十分な能力が発揮できるのですから。
 単に脳が大きいだけでは、“大男、総身に知恵が回りかねる”の類にしかならないのでして、巨大脳への進化の法則は、全く別の所にあるのです。
 巨大脳の持ち主のクジラやゾウと、ヒトとの共通点は何でしょうか。
 クジラは陸上の四足動物が海に入って進化したのですし、ゾウも過去に水生生活に十分馴染んだ形跡を残していますから、巨大脳への進化も、水生環境で起きたのではなかろうかと推察されます。

 これは、「ネオテニー現象(幼形成熟)」と考えて良いでしょう。
 両生類の中には、幼いままの形で大人に成熟する種が幾つか存在しますが、こうした現象を言います。
 ヒトは、大型類人猿に比べて、特に、頭蓋骨が「ネオテニー現象」を起こしていて、誕生してから大人になるまで、単に全体が大きくなる傾向が強いです。
 ちなみに、チンパンジーやゴリラは、誕生したときはヒトとそっくりの形ですが、その後、あご骨が大きく成長し、前に突き出していきます。
 この「ネオテニー現象」は、水生哺乳動物に一般的に見られる傾向です。
 ヒトの赤ちゃんにおいても、ずっと水に浮かんだ状態で過ごせば、地球の重力の影響をほとんど受けることはないですから、大型類人猿のように生後直ぐから重力に逆らって首を据える努力をする必要はどこにもありません。
 よって、体が大きくなるのに比例して頭がどんどん大きくなっていっても、何ら支障が生じないのです。
 このようにして、ヒトは、水生生活を長く続けたことによって、頭蓋骨の幼形成熟が進んでしまい、それが固定化されてしまって、チンパンジーの3倍もの大きさの脳を持つに至ったと考えて良いのではないでしょうか。
 クジラやゾウの脳が大きくなったのも、同様にして、「ネオテニー現象」が定着してしまっているからでしょう。
 なお、解剖学的知見から、ヒトについては、大変興味あることが分かっています。それは、ヒトは、元祖哺乳動物の原始的形質を最もよく留めているということです。
 つまり、進化から取り残された“生きた化石”なのです。
 そもそも霊長類に、その傾向があるのですが、その中で唯一、幼形成熟が著しいヒトですから、成体に原始性が強く残ってしまうのです。

 最後に、知能に関連して、言語能力について触れておきましょう。
 ヒトがヒトたる所以は、言葉を喋り、文法を理解する能力があるからだと言います。確かに、チンパンジーにいくら訓練させても言葉を喋ることはできません。
 その原因は、第1に、随意呼吸ができないからです。
 チンパンジーに「はい、息を止めて… はい、息を吐きましょう。」と要求するのは、ヒトに「はい、心臓を止めて… はい、脈打たせましょう。」と要求するのと同じくらい難しいことなのです。
 第2に、ヒトの喉は特殊な構造になっていて、口で息を吸って口から息を吐くこと、つまり口呼吸ができます。これにより、口から息をゆっくり吐きながら、声帯を震わせ、口や舌を動かして、発声できるのです。
 しかし、チンパンジーは口呼吸ができませんから、ヒトのように言葉を喋ることは、どだい無理な話なのです。チンパンジーは瞬間的に喉から空気を吐き出すことしかできませんから、叫び声や鳴き声しか出せないのです。
 それ以外の発声は、鼻から息を吐くときの鼻声です。
 従って、今日では、手話により、チンパンジーがどれほどの言語能力を持っているかの研究が進められています。
 それによると、チンパンジーは、数多くの言葉が理解できるのはもとより、文法を理解する能力もあることが分かり、随分と人との情報交換ができるようです。加えて手話を覚えた彼らは、仲間内で手話を使って会話するまでになったのです。
 こうしたことから、チンパンジーは言葉は喋らないものの、彼らの脳の中においては、言葉や文法を駆使して思考しているのではないか、と私は思っています。
 そうでなければ、「政治をするサル」のような高度な戦略を立て得る知能の説明が付かないからです。
 なお、喉の構造が特殊な形に変化し、随意呼吸が可能となり、口呼吸するというのも、水生哺乳動物に共通した特徴で、こうしたことからも、ヒトは,質の高い水生環境に長く親しんだであろうと推察されます。
 本章では、ヒトの4つの特徴のうち、「直立二足歩行」と「大きな頭」について、取り上げ、どのようにしてヒトは進化してきたのかを概説しましたが、これらは、ちゃんとした進化の法則に則っている確かなものなのかどうかを次章において説明することにしましょう。

次ページへ ⇒ 第3章 これが本当の進化の法則




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